マンション購入後、すぐに区役所に向かったが…

 社会福祉法人が運営するA保育園の成り立ちは少し変わっている。1960年代に現在の理事長夫妻が、地域の子育て世代のために自邸を改造して無認可保育園をスタートさせた。その後、親も園も一丸となっての署名活動などが実を結び、1972年に認可園に。娘が入園した2012年当時は2歳児までの園だったが、理事長が近所にあった別邸(当時の理事長の住まい)を提供してくれたおかげで、2014年に3歳、4歳、5歳児のための分園ができ、就学前まで安心して子どもを預けることのできる保育園となった。奥様を亡くされ、かなりのご高齢である理事長は、今は小さなマンション暮らしだと聞くが、子ども達を思うその温かな思いが、この園の空気感を作っていたように思う。

 というわけで、杉並区に住み続ける限りは保育園の心配はなくなったのに、娘が1歳の冬、私の実家のある大田区へと引っ越すことを決めてしまったのだ。高齢夫婦だったため、夫も50歳の大台を目前に住宅ローンを組むなら今が最後のチャンス、日経DUALでお金の記事を連載中のFP・中嶋よしふみさんからはお目玉を食らいそうな家計状態だったが、ちょうど実家の近くに条件に合うマンションが建築中で、ほとんど衝動買いだった。

 当時娘は1歳。マンションの完成予定は約1年半後で、購入を決めた後、すぐに私が向かったのは大田区役所の保育課だった。保育園事情を聞くためだが、認可園への転園はほぼ絶望的で認証園も難しそうという回答に、新居の夢を膨らますどころではなかった。

 とはいっても落ち込んでばかりもいられない。早速、認証園に電話してリサーチし始めた。もちろん5歳児まで見てくれる園はどこも満員のうえにキャンセル待ちをしている人がいる状態。2歳児クラスまでの園なら空きのあるところがあったが、今後のことを考えると、できれば5歳児クラスまでの園に入れておきたかった。

 一方で、2歳児クラスまでの園も「空き」は1名程度で、検討している間に空きがなくなってしまったこともあった。認可園のリーズナブルな料金から一転、認証園になると1カ月で最低7万~8万円は覚悟しないといけない保育料も頭痛の種だった。

 大田区で認可園に入れることを願ってギリギリまで今の保育園にいるのが一番安上がりだが、ポイント加算がつかないので奇跡でも起こらない限り無理。色々調べていくうちに、「幼稚園もアリかも」と思い始めた。

 幼稚園は専業主婦専門という固定観念にとらわれていたが、どうやら最近は保育園並みに延長保育があったりする幼稚園もあるようだ。多少遠くても園バスがあるし、これはイケるかも! と喜んだのもつかの間、やはりそういう「至れり尽くせり」の幼稚園は大人気で、見学に行ってはみたものの、入るのはかなり難しそう…。2歳児のうちから園が定期的に主催するプレスクールなどに通っておく必要もあったりするようで、遠方のわが家には無理だし年齢的に手遅れ。延長保育や給食、園バスなどは別料金で、あれもこれもとオプションを付けていくと認証園を上回るような金額になってしまうのも、これからローンの重圧がかかってくるわが家にはツラいところだった。