東京都子供子育て会議において

 冒頭にも述べたように、僕は東京都子供子育て会議の委員として、「東京都子供・子育て支援総合計画」の策定に関わりました。これは国の子ども・子育て新制度に合わせて、自治体が策定しなくてはいけないもので、各地で会議体がつくられ、そこで地域ごとに異なる子育てニーズに対応し、政策を形作っていくはずでした。

 僕は待機児童ナンバーワンであること、病児保育ニーズも最も強いこと、さらには虐待が大阪に次ぎ多いこと等など、東京の現状を把握し、それに対して国に先行して積極策を打っていくことを提言しました。

 しかし、都官僚たちから返ってきた答えは、ほぼゼロ回答。僕だけではありません。多くの委員が、現場のニーズに基づいた提言をしていたにも関わらず、彼らは国のメニューをほぼ踏襲した、総花的ではあるが、十分に効果的とは言えない施策を、ほぼ決定の「たたき台」として羅列し、形だけの審議会運営を行ったのでした。

 ある委員がたまりかねて、こう吠えました。

「この人たちは、ホッチキスなんですよ。こんな風に議論しても、まるで意味がない!」

 ホッチキスというのは、国から降りてきた政策メニューを、自治体への説明資料とがっちゃんこするだけの役割、という意味ですね。何もやっていない都を痛烈に皮肉る発言だったのです。

 通常、ここまで有識者会議の委員に手ひどく言われるシチュエーションというのは、あまり(というかほとんど)ありません。

 しかし、そう言われても仕方がない状況が、実際にありました。しかし優秀な都の官僚が、なぜ「ホッチキス」しかしてなかったのでしょうか。それは、トップの優先順位にあります。