キレる高齢者、暴走老人が激増中

 最後に、あと一つ指摘しておきましょう。ここまでは「キレる」児童についてお話ししたのですが、キレているのは年少の児童だけではなく、国民全体がキレているのです。暴行犯の検挙人員をみると、1995年は5976人だったのが、2014年は2万4419人と4倍以上に膨れ上がっています(警察庁統計)。

 さらに年齢層別にみると、増加率が最もすさまじい層があります。それは高齢層です。図3は、60歳以上の高齢者と14~19歳の少年の暴行検挙人員の推移です。1995年の検挙人員を1.0とした指数のカーブを描いています。

 60歳以上の高齢者の暴行犯は、この20年ほどで25倍以上に激増しています(14~19歳の少年は微減)。この期間中、60歳以上人口は1.6倍にしか増えていませんから、高齢化という要因で説明できる変化ではありません。ちまたでよく言われますが、キレる高齢者、暴走老人が明らかに増えています。

 敬愛の対象として説かれる祖父母世代の蛮行を目の当たりにすることは、幼い子どもの人格を歪めるのに十分でしょう。先日、バス車内でケータイで通話し、運転手に注意され逆ギレする老人を見かけましたが、近くにいた小学校低学年くらいの男の子のさげすんだまなざしが実に痛かった……。

 私は基本的に、子どもの問題行動は大人社会の歪みの投影であると考えています。日本では少子高齢化が進みますが、人口比が「子ども1:大人9」の社会になったとき、子どもの人間形成に対する大人のモデルの効果はひと際大きくなります。上の世代はこのことを自覚し、振る舞いに注意しなければなりますまい。

 次回は、義務教育の落第のお話です。日本の小・中学校では落第は皆無ですが、諸外国ではさにあらず。データで、日本の常識を相対視してみようと思います。