子どもの遊び相手が20年で「友達」から「母親」に?

 近年、小1児童の学校生活への不適応が問題になっています。東京都教育委員会(都教委)の実態調査の定義を借りると、「入学後の落ち着かない状態がいつまでも解消されず、教師の話を聞かない、指示通りに行動しない、勝手に授業中に教室の中を立ち歩いたり教室から出て行ったりするなど、授業規律が成立しない状態へと拡大し、こうした状態が数カ月にわたって継続する状態」です。2012年の都教委調査によると、都内の公立小学校の5分の1で、こういう状態になっていたとのこと。

 関係者の間では、「小1プロブレム」現象として知られています。表1でみた暴力行為の加害者の激増は、これに伴っているといえるでしょう。

 なぜ、こういう事態になっているのか。小学校1年生といったら、幼児期の生活の影響をとどめていると思いますが、就学前の過ごし方に何か変化でも起きているのでしょうか。この点について、ベネッセ教育総合研究所が興味深いデータを公表しています。図2は、乳幼児の遊び相手の変化をグラフにしたものです。就学前の乳幼児がいる親御さんに、子どもの主な遊び相手を複数回答で尋ねた結果です。

 この20年間で「友達」が減り、「母親」が増えています。1995年では同じくらいの選択率でしたが、その後どんどん差が広がっています。複数回答の選択率ですが、幼児は外で友達と遊ばなくなり、母親の庇護下に置かれるようになっていることがうかがえます。

 子どもを狙った犯罪が多発しているので、子どもを外に出さない親御さんが増えているのでしょうか。早期受験の広がりにより、塾や習い事に通う幼児が多くなっていることも考えられます。

今の子どもは群れて遊んだ経験に乏しいのではないか

 昨年、都内の公立学校の先生方を対象とした講演で、「小1プロブレム」現象についてお話ししたのですが、ある小学校の副校長先生が「今の子どもは、学校に上がる前に、友達と群れて遊んだ経験に乏しいのではないか」とおっしゃっていました。なるほど、上記のデータをみるとさもありなんです。

 小学校に上がるとタイトな集団生活が始まりますが、同輩集団(peer group)で群れた経験に乏しい子どもがいきなりそこに放り込まれたら、諸々の不適応が起きるのは道理です。

 幼い子どもは庇護されるべき存在ですが、そればかりではいけない。大人が適度に見守りつつ、彼らだけの世界も尊重されなければなりません。対等な仲間集団において、欲求をぶつけ合い、それを調整する術を学ぶ。そのことが、他者との社会生活が営める社会的存在としての自我を内面化させることにつながります。

 また、保育所・幼稚園と小学校の落差を緩やかにする必要もあるでしょう。勉強のスタイルをとっても、前者では遊びを通した総合的な教育ですが、後者では机に座って教科書を開く教科教育がメインになります。6歳の幼児が、そうした大変化についていくのはなかなか難しい。変化にグラデーションを持たせる「幼小連携」の取り組みが各地で行われています。結構なことです。