帰国後、娘は英語の発音の良さや“あぐら”をかく習慣などを修正した

―― 多少たどたどしい英語でも、「話すべきこと」を持っている人は強いという意味ですか?

井上 仰る通りです。技術者がいい例ですよね。彼らは誰よりも製品や技術に関して知識があります。英語がたどたどしくとも、ビジネスの場においては皆彼らの意見に熱心に耳を傾けます。知識なり、技術なり、しっかりしたものを身に付ければ仕事もお金も後から付いてくる、というのが私の持論です。

―― 確かにそうですね。そうした井上さんの手厚い教育サポートを受けながら、お子様達は海外で初等教育を受けられ、帰国子女として帰国されたわけですが、日本に戻ってきたときに何か困ったことはありませんでしたか?

井上 在米中は日本語や和食に親しむように意識して育ててきたこともあり、帰国後に入学した小学校になじむのは早かったです。ですが、日本での習慣には当初、かなり驚いていた様子でした。例えば、校舎内は上履きに履き替えること(米国では靴を履いたまま校舎に入る)や、給食の準備を自分達ですること(カフェテリアで食事が準備されている)や、授業終了後に教室の掃除を自分達ですること(掃除は業者が行う)などです。

 中学生になって英語の授業が始まり、先生に当てられて教科書を音読したら「すげえ発音!」と同級生に冷やかされて、それ以降、他の生徒達のようにたどたどしい日本語なまりの英語発音に直した、とか(笑)。それで、帰国後は近隣の教会に通って英語に触れるようにしました。

 それから、こんなこともありました。アメリカの子ども達は女の子もあぐらをかく習慣があるので、うちの娘もあぐらをかく癖がしばらく抜けなかったんです。体育館などで床に座るときに同級生に冷やかされて止めたようです。親が注意や指導をしなくても、友達に教わり学ぶことで自然に身に付いたこともたくさんあると思います。

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次回に続きます。

(ライター/砂塚美穂、撮影/蔵 真墨)