海外赴任の3大条件は「人柄・語学力・仕事力」

―― 日経DUALの読者は夫婦共働きのホワイトカラーが主流ですから、どちらかといえば欧米型であり、先進的な夫婦が多いようです。とはいえ、いわゆる御三家と呼ばれる名門進学校をお受験するような家庭では専業主婦がまだまだ少なくない、とも聞きます。

 井上さんの奥様はお仕事をされていらしたのでしょうか? ご主人の仕事の都合で渡米されて、馴れない土地で奥様のご苦労はどのようなものでしたか?

井上 家内は専業主婦です。彼女は英語が苦手でしたが、どうやら愛想で乗り切っていたようです(笑)。余談ですが、赴任先の先輩から最初にこんなアドバイスを受けたことがあります。

 「海外勤務は次の3つのうちどれか一つがないと務まらない。1つ、人柄がいいこと。2つ、英語が堪能であること。3つ、仕事ができること。君はどれでいくつもりか?」とね。

 家内は「私は1番で行くわ」と、率先して現地になじむため、人付き合いを頑張ってくれました。現地校で宿題が出ると、子どもの宿題を見てあげてほしいと、夕方、職場に電話がかかってくることもありました。そんなときは仕事を早めに切り上げて帰りました。

―― 残業などはあまりなかったのですか?

井上 90年代初頭でしたが、携帯電話を既に支給されていましたから時差のある本店や他の海外拠点との連絡のためにオフィスに残っている必要はなく、その点は合理的でした。帰宅して夕飯を済ませ、その後で家で電話会議に参加することも少なくありませんでした。