対処法はまずは見守る。チックを指摘しない、やめさせない

チックかな?と思ったら

 最初はチックという病気を知らずに、「変なクセがついてしまった」「やめさせなければ」「お行儀が悪い」と誤解することもあるようです。

 必要以上に周囲が気にしたり、心配したりすることは、かえって症状を悪化させることがあります。まずは、チックという病気の存在を、頭の片隅に置いてほしいと思います。

対処法・治療法

 気持ちが沈んでいたり、情緒が荒れているなどの不安な要素がなく、チックの症状だけが出ている場合は、どんと構えて見守りましょう。「チックが出ているから少しストレスがかかっているのかな、変わったことがあったのかな」と、子どもの様子はしっかり把握しつつ、基本は見守るスタンスです。

 1年以内に治まる一過性チックが9割以上なので、まずは家庭で様子を見てください。

 かんしゃくがひどい、腹痛を訴える、学校に行きたがらないといった様子があれば、心理的ストレスに対処できることがないか探ってみましょう。

 チックは、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)、広汎性発達障害、学習障害などに合併していることが少なくありません。勉強や日常生活に難しさを感じていないか注意してみることも大切です。

チックの治療法は?

 クリニックでは、まずチックに対する家族の理解を促し、正しい知識を伝えます。家族の心配を取り除き、適切な対応をとることで、チックが治まることが多いからです。子どもにストレスがかかっているようなら環境面を調整し、生活習慣を整えることも大切です。

 チックの症状が複雑である、チックにより日常生活に支障が出ている、本人がストレスを抱えていたり不安が強い場合は、薬物療法を行うことがあります。

受診のタイミングは?

 症状が強い、1年以上長く続いている、本人もそのことにストレスを感じているといった場合は、医師に相談しましょう。

 また、お子さんの症状が単なる一過性チックだとしても、親御さんの心配が強かったり、子どもへの声かけがやめられない、心配がぬぐえないといった場合も、専門家の話を聞くだけで気持ちがラクになると思います。

 チックの症状だけでわざわざ受診するのも…とためらいがある場合は、何かの受診のついでにかかりつけ医に相談してみてもいいと思います。また、周りのママ友に話してみると、意外とチックのお子さんが周りに多く、同じような気持ちを抱えている親御さんが多いことに気づくと思います。

森 享子

森 享子

1996年徳島大学医学部卒。医学博士(富山大学)。日本小児科学会認定小児科専門医。日本小児科学会認定小児科指導医。英国 Mellow Parenting Practitioner。オーストラリア アデレード母子病院、ロンドン大学精神医学研究所などで研鑽を積み、2014年「子ども 心と育ちのクリニック」を開設し現在に至る。二児の母。

(文/中島夕子 撮影/鈴木愛子)