手が届きやすい人物をロールモデルに

 女性社員の意識改革を進めるうえで、岡本さんが苦労したのが「ロールモデルの設定」でした。

 「女性役員がいますので、当初はその人をロールモデルとして見せればいいと考えていました。けれど、20代後半~30代にとっては女性役員の存在はまだまだ遠過ぎる。そこで彼女達より1つ上の層、つまり30代後半~40代前半の課長代理の層に注目しました。この層がキラキラしていなければ、その下の層が『上に行きたい』と思わないですよね。手を伸ばせばすぐのポジションにいる先輩が輝いていれば、まずはそこに行きたいと思うだろう、と。そこで課長代理層を集めた座談会やワークショップ、メンタリングなどを開催し、意識アップを図りました。結果、女性の課長代理層の管理職志向も高まるという成果につながりました」(岡本さん)

 また、岡本さん自身、全国のタウンホールミーティングに出席するたびに「課長代理層でキラキラした女性社員」を探し、研修やイベントで紹介したそうです。

 「最初のうちは突出した業績を挙げるなどして目立っている女性社員を紹介していましたが、『あんなふうにはなれない』という拒否反応も出てきました。そこで各支社を回る際には、頑張っている女性社員や『上に行きたい』という志向を持っている女性社員を探しました。日ごろの仕事ぶりを聞き、社内報で取り上げたり、イベントにスピーカーとして招いたりしたんです。その数が増えていくと、女性社員には『こんなにロールモデルがいるんだ』という刺激になり、お手本として紹介された女性側も背筋が伸びてさらに意欲が高まるという相乗効果が表れました。今後は課長代理手前の層で『キラリと光る女性社員』を紹介していきたいと考え、今、全国で探しているところです」(岡本さん)