営業でチームや兼務で仕事をする場合は、貢献した人に多く分配する

―― 本当にその通りです。素晴らしい取り組みですね。しかし、全社員で一丸となり、社長の経営理念を共有するのはなかなか難しいことではありませんか?

近藤 普段から呼びかけるほかに、クレドという社の方針をまとめたものを社員に意識してもらっています。

 クレドに準拠した評価表も整備しており、他人のために働くという項目があります。他人のために貢献できている人は10点、自分のことしかやってない人は0点と見なされるわけですね。

 評価などを通しても会社の方針は伝わるものです。例えば営業でチームやダブルアサインメント(兼務)で仕事をする場合は、貢献した人に多く配分されることになっています。話し合いで決め、具体的に何か手伝うことで収入が増える仕組みになっているのです。

 例えば100の売り上げがあったときに、粗利が20あれば、その3%は自動的に社員に還元していますが、その分配の仕方は自分達で決めていいよ、と。毎月600件くらいあってさばききれないこともあって、分配の割合は現場で決めてもらっています。アナログ的な成果主義と言っています。こういったことを含めて、評価が上がる仕組みになっています。

 クレドや勉強会を通じて会社が求める働き方を意識してもらっているのです。

―― 公正で透明な評価制度もあり、やる気にも結び付いているのですね。まさに人を育てる力を感じました。経営戦略と育成力、一言で言うとリーダーシップだと思います。多くのビジネスマンの課題だと思うのですが、どうすればこのリーダーシップを養うことができるのでしょう?

近藤 個人的なエピソードとしては、私は小学校から大学、社会人に至るまで、常に組織のリーダーを経験してきました。バレー部主将や山岳部のリーダー、生徒会、労働組合の委員長など。それから、ヨーロッパで一冬過ごしたときには山で雪を溶かして飲むなどしながら暮らしたことも。そんな修羅場の経験でリーダーシップを育んだという一面は確かにあると思います。しかし、同じような経験をしている経営者はたくさんいるでしょう。

 大事なのは自分が成長し続けることであり、他人を尊重する生き方を学ぶことではないかと思います。

 社長は何があっても人のせいにできません。社長にとって面白くない報告は山ほどあり、中には社長批判もあるかもしれない。それにニコニコとしながら耳を傾けるわけです。自分に責任がないことで社員が不愉快なことをやったときにも、ニコニコと聞く。これも大変な修行です。

 それと身の回りで起こることは、結果的に社長である自分が招いていると仮定します。要するに周りは全部自分が招いた世界だと。そうすると、招いているわけだから、「なぜ仕事をしない」「なぜ勉強をしない」「なぜTOEIC500点取ろうとしない」と、社員を攻めるのは筋違いなんです。やはり、自分が変わると、世界は変わるんですよ。