前回の記事で、大手広告会社の第一線で活躍するパパクリエイターが会社を辞めて、妻と2人の息子(6歳・2歳)とともに海外移住する決断に至るまでの経緯をお伝えしました。まずは長男が小学校に入るタイミングで海外教育をスタートさせるべく、移住準備のための“家族海外ツアー”を計画した吉田和充さん。期間は次男の育休中の約4ヵ月間。用意した資金は日本で払っていた住居費なども含め約800万円。最初の行き先は、アジアでの教育先進国として注目されるシンガポールでした。

幼稚園代だけで月約20万円。シンガポールは「高い」と判断

 シンガポールでの滞在先はAirbnbを利用してコンドミニアムの部屋を探し、地元の幼稚園に長男を通わせてみたが、「とにかく生活費の高さを痛感」。家賃は50㎡ほどで50万円。幼稚園代はバス送迎費など込みで月約20万円。食費は屋台などで節約できても、日本食好きの長男の希望に応えて伊勢丹で調達することが多かった。

 「あらかじめ見込んで計算をしていた範囲とはいえ、赴任ではなく個人として長く滞在することは難しい」と判断して2カ月ほどでフィリピンのセブ島へ。ここでは「事前に家屋の写真は見られても、周囲の環境の写真までは見られない」というAirbnbの盲点で、スラム街に滞在することになるというハプニングがあった。

 地元の子ども達と泥まみれになって思い切り遊べる生活に長男は大満足の様子だったが、次男がまだ乳児だったこともあって滞在拠点をホテルに切り替え。その後、ベトナム・ホーチミンとマレーシア・ペナン島にも立ち寄って日本に帰国した。

 この海外生活の間には、マレーシアのインターナショナルスクールなど数校の入学テストも受けに行った。緊張からか長男は「試験で一言もしゃべらなかった」と言い、学校からは「判断できない」という理由で不合格になったが、「英語がある程度話せたら問題ない。スカイプ試験で再度評価できる」と説明された。

 海外ツアー中には、現地だからこそできる情報収集にも時間を割いた。海外生活に関する著者がありアジアで生活をしている事業家の加藤順彦氏などにアポを取り、面会もしてビジネスチャンスのヒアリングもするなど“生の情報”も取りに行った。

 旅行の前後、見学を希望する学校との連絡や事前に必要な手続きはすべて英語でやり取りしていた。

 「とにかく自分から貪欲に情報を取ろうと思って行動していました。海外移住生活を始めようとしたときに、エージェントから来る情報や本に載っている情報だけで判断しようとする人もいるかもしれませんが、僕の実感ではそれだけではとても足りないと思います。興味のある地域について詳しく書いてある本の著者にFacebookのメッセージ機能を使って質問をしたり、実際に会って話を聞くアポをお願いしたり。気になる地域の政情をニュースサイトでチェックする、現地の学校宛てに英語でメールを送って疑問点を解決するなど、手間を惜しまず自力で情報を集めました」

滞在したセブの家のバルコニーにて。近所の子ども達といつの間にか友達に。女の子に抱かれてるのが次男で、バギーに乗っているのが長男
滞在したセブの家のバルコニーにて。近所の子ども達といつの間にか友達に。女の子に抱かれてるのが次男で、バギーに乗っているのが長男