雑誌などの保険記事では、基本的には夫のみが働いていることを想定して提案されることも少なくないようです。しかしDUAL読者は共働きで、場合によっては妻の収入のほうが多いこともあります。現在、DUALの平均的な読者像は0~12歳の子どもを育てながら夫婦ともに働いている手取り年収800万円世帯。こんなDUAL世帯に向けた「新・保険の常識」を確認していきます!

【共働き子育て家庭の「保険」これだけ読めばOK特集】
第1回 この保険の入り方はNG!共働き「3つの落とし穴」 ←今回はココ
第2回 共働き夫婦に終身保険は不要 ダラダラ支払いはムダ
第3回 パパの定期保険、ママの収入保障保険 お薦めリスト
第4回 医療はがん保険だけで十分 オススメ保険ベスト3
第5回 共働き子育て家庭 意外に知らない加入マスト保険!

 さて、第1回の記事で注目する「共働き『保険の3つの落とし穴』」について、これから詳しく解説していきます!

落とし穴1. 「お葬式代確保」のための生保加入

前に入った保険を“見直さず入りっぱなし”にしているから

 「生命保険とは必要なとき、必要な保障だけ買うという商品です。例えば、車を買った人は自動車保険に入りますよね。逆に言えば、車を持たない限り自動車保険は要りません。それと同じように“必要でない保険”には入らなくていいのです。これが保険を考える基本と考えてください。一般の品物であれば当然の考え方ですが、いざ保険となると、その考え方を忘れてしまう方が意外と多いのです」とファイナンシャル・プランナーの深野康彦さん。

 新入社員のとき、職場を訪れた保険レディーに「生命保険に入って一人前」などと言われて生命保険に加入した人はいませんか?

 「自分が他界しても、誰かの面倒を見ていない限り保障は必要ありません。よく『自分のお葬式代くらい自分で用意しましょう』とセールストークで言われることがありますが、お金を最期にきれいに使い切って亡くなる方なんてほとんどいません。つまり、お葬式代くらいは何とかなるものです」と深野さんは言います。

 「社会人になって必要になる保障はただ2つ、死亡保障と医療保障です。しかも、新入社員のときに、あえて必要といえるのは医療保険だけ」と深野さん。

ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さん
ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さん

 「私達の誰もが公的な医療保険に加入していますから、医療費は3割負担で済みますし、さらに高額な医療費がかかった場合には『高額療養費』といった制度もあって、保険診療内の治療であれば最大でも自己負担は8万~9万円で済みます。ただ、若いときに大きな事故などで入院した場合、まだ貯蓄がじゅうぶんでない場合もあるかもしれません。病気やけがは待ってくれませんから、そうしたケースに備えた医療保険はあったほうがいいでしょう。その後、お金が貯まったらこれも解約してもいいのです」(深野さん)

 では、生命保険はいつ必要になるのでしょう? 結婚したときでしょうか? 深野さんは「共働きでいわゆるDINKSの状態であれば、生命保険は基本的には不要です。赤ちゃんができて、夫か妻のどちらかが亡くなったときの経済的損失を補てんする。それが生命保険の役割だからです」と言います。

 でも、この死亡保障もずっと必要なわけではありません。死亡保障の必要性は、末の子どもが生まれた日がピークで、その後、徐々に下がっていきます。

 主婦誌などでは内容を分かりやすくするために、夫と専業主婦やパート勤務の妻をモデルにした一般的なケースを前提に「夫が亡くなったらいくら」と簡素化して書かれている場合もあります。しかし、DUAL読者は共働き。場合によっては妻の収入のほうが多いこともありますから、一般的な事例が当てはまらないことが多いのです。

 「例えば妻の収入を全額貯蓄に回していて、夫が生活費を担当している家庭なら、夫が亡くなっても不足する経費を賄うくらいでいいかもしれません。あくまでも『万一のときに足りなくなる分を補う』という狙いで保険を考えてください」(深野さん)

 「子どもが生まれたら」「2人目が生まれたら」「夫婦のどちらかが仕事を辞めたら」というふうに、そのときの家庭の状況や貯蓄額に合わせて見直すのが保険の常識です。よくある“一度入って放っておく”のはお金のムダ以外のなにものでもありません。

 では、どんな入り方がいいのでしょうか? これについて詳しくは、第3回の【共働きならパパは定期保険。ママは収入保障保険】をご覧ください。編集部がセレクトした、合理的に設計してある保険商品のリスト付きで紹介します。次ページでは、2つ目の落とし穴を解説していきます。

<次ページからの内容>
・ 正社員同士の夫婦は実は“手厚い保険”に守られている
・ 保険ではカバーできない共働きのリスクって?
・ 保険より、用途の限定されていない貯金のほうが向く場合もある