AIに代替される職業の関連資格はどうしたら生かせる?

 では、DUAL読者の皆さんにとって身近な、現実的に取得を検討する選択肢として挙がりそうな資格について見てみましょう。

 以下に挙げるのは、AIに取って代わられるという予測により、今後取得しても生かしにくい可能性がある資格です。ただし、やり方によっては生かす道もあります。

●3級あるいは2級以下の事務系資格

 代表格が、おなじみの「簿記」。先に紹介した「AIに代替できる職業」には「経理事務」も挙げられています。

 経理事務として採用対象になるのは簿記3~2級の取得者ですが、単純な伝票仕分けや帳簿作成などの業務にAIが導入されれば、ニーズが減少していくと予想されます。特に大手企業の経理事務などは、必要とする人員数が減っていくのは間違いなさそうです。しかも、採用時には「実務経験者」が優先されるため、資格があっても未経験ではチャンスをつかみづらくなります。

 では、簿記資格を生かす道はあるのでしょうか。

 「すべての企業にAIが行きわたるとは考えられません。中小企業、地方企業、個人商店などでは従来スタイルの経理事務職が必要とされるでしょう。ただし、小規模企業では経理の専門職を置く余裕はなく、複数業務を兼務することが求められます。他の資格・スキルと組み合わせるといいでしょう」(高村さん)

 例えば、人事、オフィスソフトでの文書作成、ウェブ、ITなど、幅広い業務の資格を取ったりスキルを磨いたりすることで、簿記資格も生かしやすくなります。

 あるいは、「簿記1級」、さらに「税理士(科目合格でも評価大)」など、より高度な資格を取得して専門性を極めるのも有効。併せて「経営」を学び、会社の数字から経営状態を分析できれば、人材としての価値を発揮できます。

●貿易事務、医療事務

 貿易事務、医療事務はいずれも女性に人気が高い資格。しかし、先に挙げた「AIに代替できる職業」に挙げられています。

 「貿易事務の仕事はまったくなくなるわけではありません。しかし、ニーズに対して有資格者が過多の状況になると、給与や派遣の時給が下がる可能性があります。ワーキングプアの道にはまってしまう恐れも」(高村さん) 

※ワーキングプア=「働く貧困層」。フルタイムで働いても貧困から抜け出せない人々を指す。

 医療事務は、短期間での取得が可能で、景気に左右されないこと、地方にも求人があることから女性に人気が高い資格。人気だけに取得者が多いため、AIの導入が進むにつれ、仕事に就くための競争倍率が高まっていきそうです。

 「貿易事務」の場合、輸出入を主軸とする大手企業ではAI導入に伴って必要な人員が減ると予想できますが、新たにEコマースサイトを立ち上げる企業、ネットショップで輸入販売を手がける個人や中小企業などでは知識と経験が生かせそうです。通信販売やネットショップ運営に関する資格と併せ持つと、可能性が広がります。

 「医療事務」は、高い倍率の中で採用確率を高めるなら、語学力を身に付けるといいでしょう。医療事務は受付を兼ねるケースが多いため、外国人患者が増えていくのに伴ってニーズが高まりそうです。また、医療事務と一口に言っても、扱う業務によって資格が細分化されています。複数の資格を持っておけば、その分、応募できる求人の選択肢が増えるでしょう。

●CAD関連資格

 建築、機械、電気などの分野で図面の作成を行う「CADオペレーター」もまた、AIに代わられる職業の一つ。今現在は2020年のオリンピックに向けての建設ラッシュを背景にニーズが旺盛ですが、この先は活躍の場が減ると予想されています。

 未経験からでも比較的目指しやすいのは建築分野。大手ゼネコンなどのCADオペレーターは人員削減が予想されますが、中小の工務店などではニーズが続くでしょう。今後はリフォームなどの需要が高まる見込みです。インテリア、リフォーム、建築関連の知識・資格も身に付けることで、CAD資格も併せて生かせる可能性があります。

●販売関連の資格

 いずれは物品販売もAIが担う時代に。販売や接客に関する資格もこれまでとは評価が変わる可能性があります。もともと資格よりコミュニケーション力が重視される職業。実務を行ううえで専門知識を持っておくのは望ましいのですが、採用選考などで資格が確実にプラスになるとはいえません。

 「訪日外国人客が急増する中、外国人客に対応できる販売員は今後もニーズが高まるでしょう。語学力と組み合わせれば、販売関連の資格も生かすチャンスが広がります」(高村さん)

 ただ資格を持っているだけでは価値を認められないこともあります。その学習で得た知識を生かして、販売戦略を提案するなど、実践していくことが大切です。

 この他にも、意外な分野にAIが進出し、仕事が奪われていくかもしれません。しかし、どんな資格でも、自分がもともと持っている実務経験との組み合わせ方、あるいは独自のアイデア次第で生かせる可能性があります。一般論に左右されず、「自分ならどう生かすか」を考えたうえで選んでください。