「ミュージカルを通して戦争を“体感”してほしい」
“ミュージカル”というと楽しい作品を思い浮かべがちですが、1996年の初演以来、何度も上演されている『ひめゆり』は、第二次世界大戦中、沖縄戦に巻き込まれた女学生達を描く異色作。今年の主演は昨年に引き続き、『おかあさんといっしょ』でしょうこお姉さんとして活躍した、はいだしょうこさんです。作品への思い、ご自身の幼少時の観劇体験をお聞きしました。
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12年前にこの作品を初めて見て、私は強い衝撃を受けました。それまで、祖母達から戦争の話を聞いたことはあったけれど、実際に起こったエピソードの数々を舞台で見ると、本当にリアルに感じられ、終演後、しばらく席から立てませんでした。
そのときからの思いがかなって昨年、初出演。稽古前に沖縄に行き、学徒隊が隠れたガマの中に、ガイドさんの話を聞きながら入ったのですが、そこは目を凝らしても何も見えないくらい真っ暗で、そんな中で学徒隊は患者さんを手当てしていたそうです。稽古では、涙が出なかった日がないほど登場人物達の悲しさや悔しさが体に入ってきて、終わると魂が抜けたように感じました。
私が演じるキミちゃんは、つらい経験を重ね、たくましくなってゆかざるを得なかった女学生。信念を持って人を助ける婦長さんに影響を受け、強く生き抜いていきます。
難しい話も、ミュージカル形式だとお芝居と歌を通して、お子さんでもすっと理解できると思います。『おかあさんといっしょ』を見ていたお子さんにとっては「あの人ほんとにしょうこお姉さん?」というくらい印象が違う役ですが(笑)、私をきっかけに足を運んでいただいて、「こういうことが実際に起こったんだ」と知っていただけたらうれしいですね。その後、修学旅行などで沖縄に行ったりすると、また違ったものを感じていただけると思います。
両親が宝塚ファンだったこともあって、私は母のおなかにいたころから舞台を見ていました。小さいころに見たミュージカルの旋律は、大きくなっても体のどこかに残っています。幼少期の芸術体験は、お子さんの感受性をきっと豊かにしてくれますよ!