生き方を決めた小学生のときに読んだ小説

「著作リスト」より抜粋
「著作リスト」より抜粋

 両親から「くだらない本は読むな。家にある本はどれを読んでもいい」と言われたおかげで、家の本棚にあった文学全集や文庫本を手当たり次第に読みました。内容がどうであれ、活字を追っていれば満足でした。その1冊に改造文庫の『寡婦マルタ』がありました。

 著者はオルゼシュコ。ポーランドの女性です。題名にカタカナが混じっているから、岩波文庫の『グリム童話集』のように面白いだろうと見当をつけたのですが、まったく違いました。女性の地位の不安定さを生々しく描いた小説だったのです。

主人公マルタは、結婚して娘を出産します。夫に「わたしの小鳥ちゃん」と呼ばれるほど仲睦まじい夫婦です。私はもう、うっとりしました。

 ところが、夫が馬車の事故で急死。蓄えも十分でなく、幼い娘を抱えて生活に困窮してしまいます。女学校で身に付けたフランス語やピアノを生かして家庭教師の仕事を探すけれど、稼げるほどのレベルではなく、やっと見つけた仕事は低賃金の洋裁店の縫い子で、母子の生活はどんどん追い込まれていきます。

 転落していく日常の様子が真に迫っていて、結末も悲惨でした。「女といえども、世の中に通用する仕事を持つべきだ」。まだ10歳にもならない子ども心にそう思ったのです。

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 日本中のママを感涙させた子育て奮闘記~

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 ~私の保育士時代、子ども時代

 ◎保育園の子どもたちに教えてもらったこと
 ◎みんな、本が教えてくれた
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 ~悩めるママと中川李枝子さんの子育てQ&A

 Q. イヤイヤ期の3歳の長男についいら立ってしまいます
 Q. 保育園と幼稚園、どちらがいいのでしょうか?
 Q. わが子の成長をついほかの子どもと比べてしまいます
 Q. 子どもと一緒に読むおすすめの絵本を教えてください など

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