家族はときに衝突しながら学び合い、成長していくもの

 優大くん亡き後、広数さんは「葬儀のときのあの光についてもっと知りたい」と、ヨガや座禅に触れたり、哲学や縄文文化を学んだりし、昨年末はインドへ旅に行きました。9年間の国内マーケティング部門勤務を経て、今年7月からバンコクでの新生活が始まります。8月には現地へ向かい、再び海外での子育てを経験することになる幸恵さん。

 「学生時代に付き合ってから、育った環境も個性もまるで違う私達夫婦。これ以上いってはもう無理っていうくらい擦れ違ってきました(笑)。それを戻すときに、私達はいつもかなり真剣に話し合い、あなたはどう思っている、私はこう思っているということの繰り返し。私の中で、この人と一緒に歩んでいくという疑いのなさもあったので、ずれを感じるたびに歩調を合わせる努力、話すことは欠かせませんでした」。波瀾万丈の経験を夫婦で乗り越えられた秘訣を聞くと、幸恵さんはそう答えてくれました。

無邪気な子ども達。ときに壁にぶつかりながら、家族でともに学び合い、成長していきます
無邪気な子ども達。ときに壁にぶつかりながら、家族でともに学び合い、成長していきます

 「根っからの体育会系勝ち負け論者の僕にとって、優大の命、そして献身的に介護に向かった妻と真正面から向き合ったことは、生きるということについての大きな学びの機会となりました。価値観が半分しかなかった僕に、もう半分の人間らしい本来の自分を取り戻させてくれた。『幸せになれる』『幸せにする』のでなく、今を生きている一瞬一瞬が『幸せでいられる』。誰かや他の何かが僕を幸せにするのでなく、幸せはいつも身近にあり、自分自身で主観的に感じるもの。改めて、命日を悲しむ日にせず旅立ってくれた優大に感謝しています」と広数さん。

 長女みおちゃんも加わって、現在は4人で5人家族。「僕達は相変わらず幸せ。優大と一緒に暮らしていたときのように、一瞬一瞬を大事に積み重ね、目を輝かせて毎日を生きていきたいです」

<関連サイト>
■ 「Shanti House」ブログ http://ameblo.jp/youachu/
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(文・構成/日経DUAL 加藤京子)