これがシンガポール育児の特徴だ
最後に、私から見た、シンガポールでの子育ての特徴について、まとめたいと思います。
どの世帯も概して、びっくりするくらい「緩い」印象です。祖父母世代の家で食べること、外食することに抵抗がありません。日本で育てられた私は、平日に大変だからと外食することには、まだ抵抗がありまくります。潜在意識が全否定します。それは日本人の勤勉さと真面目さが染みついているからだと思っています。
さらに、わが家の子ども達は毎日お弁当を持っていきますが、学校には有料のお弁当サービスがあります。が、この有料サービスを利用するのは週に1回だけと決めています。子どもの食を大切に思ってのことなのですが、自分に厳しい面も否めません。そんな私からすると、あまりそういうことにこだわらずやっているシンガポール人の人々を、「・・・楽そうで、いいなあ」と羨ましくなる面もあるのです。
ホーカーセンターという、HDBの近くには必ずある屋外フードコートは、物価が高騰するシンガポールでもいまだギリギリの線で安さを守っています。例えばチキンライスや、フィッシュボール・ヌードルは安くて3ドルから食べることができます。さらにホーカーには大体テレビが天井にくっついていて、おじいさんやおばあさんが一人で来てテレビを眺めながら夕ごはんを食べたり、そうかと思えば三世代大家族がわいわいと食事をしていたりと、さながらリビング・ルームのようです。
祖父母世代が赤ちゃんの面倒を見たり、塾や幼稚園の送り迎えをしたりしている様子は、ここシンガポールの日常風景です。日本と比較してみると、祖父母世代に頼ることが気兼ねなくできている印象を受けます。祖父母世代との確執も、ちらほら聞いたりはしますが、それでも日本のように物理的距離が離れていない分、まだ家族として機能しています。
女性のキャリア維持には最高の環境として取り沙汰される、以上のようなシンガポールの状況ですが、かといって日本も見習え、それっと言って安易に適用することができない文化的諸事情も見受けられます。
まず外食ばかりの食環境は子どもにとって最高とはいえません。さらに、メイドに子育てを任せきって、母親よりメイドに懐いているという例も聞いたことがあります。外国人労働者を受け入れる環境は今後の少子化により必須といわれているものの、まだまだ整っていないのが現状です。
何でも右に倣えでまねするのではなく、各国のやり方を自国の状況に合わせてカスタマイズし、日本での子育てがもっと共働き世代に優しいものになるといいですね。以上、シンガポール共働き家庭の食事・台所事情でした。
(取材・文・写真/宮うちみか 海外書き人クラブ)