こんにちは、治部れんげです。7月に予定される参議院選挙を前に、今回は子育てと政治について考えます。5月22日(日)の午後、東京・四ツ谷にある上智大学で「保育園落ちた!選挙攻略法2016」と題したイベントが開かれました。イベントは二部構成になっており、第一部は政治学者、小説家によるパネルディスカッション、第二部は国会議員が参加者の質問に答えました。私も一部に登壇したので当日の様子をリポートします。参加者は約120名、「子育てと政治」というテーマのため、子連れの方も多かったです。

川上未映子さん「親として『おかしい』と思ったことは発言しよう」

イベント「保育園落ちた!選挙攻略法」会場にて
イベント「保育園落ちた!選挙攻略法」会場にて

 最初に小説家で詩人の川上未映子さんがお話ししました。川上さんには『きみは赤ちゃん』などの著作があり、ご自身が子育て中です。川上さんはメディアの取材で「どうしたら幸せに子育てができますか」と聞かれることが多いそうですが、あえて「ハッピーな子育てという枠を、いったん外してほしい」と言います。「子育ては過酷でしんどいのが当たり前。キラキラとすてきなイメージとのギャップに苦しむ人が多い」という言葉に、うなずく人がたくさんいました。

 川上さんは「子どもの親として『おかしい』と思ったことには積極的に意見を言いましょう」と呼びかけました。ご自身が社会問題について行政に電話して意見を述べた経験から「大変だし悔しいし、しんどいけれど、つなげていきましょう。やり方は色々あるので、自信を無くさないで」と参加者を励ましていました。

 次に私がお話ししました。まずは「個人的なことは政治的なこと」という話をしました。働く母親から「一人で家事・育児をするのがつらい」という話をよく聞きます。これは本人の能力の問題ではありません。父親が家事・育児に参加できないことの背景にある長時間労働等の社会問題があります。「個人の悩みを社会構造につなげて考えよう」ということは、半世紀前にフェミニストが提案したことで、それは今も必要とされています。

 また、「政治を怖がらず意見を言ってほしい」ということもお伝えしました。保育園を増やしてほしいと思うとき、そこには税金の使い方に関する自分の考えが表れています。今の日本で生きている働く親にとって 「税金の使い道を考えることこそが“政治参加”」だと私は考えています。最後に、戦略的に伝えることの重要性をお話ししました。後ほど詳しく記しますが、女性活躍の必要性は、与党の男性政治家にも浸透してきています。うまくコミュニケーションを取って味方を増やせば、状況は変えられるはずです。

 第一部の最後には、上智大学教授で政治学者の三浦まり先生がお話ししました。7月の参議院議員選挙では、争点の一つが憲法改正だといわれています。子育てと政治を考えるうえでは「憲法24条が大事です。自民党の改憲草案を見ると、家族が助け合うことが追加され、また13条からは個人という言葉が削除されています。結婚もカップル二人の合意だけで成立するわけではなくなりそうです」と三浦先生は言います。

 「家族が大事だということは、世界人権宣言にも書かれています。人権宣言には国家は家族を助けなくてはいけない、とも書かれています。この発想には保育園の整備も含まれているでしょう。一方で自民党の改憲草案には、国家は家族を助けるということは書かれていません。皆さんは家族をどんなふうに捉えていますか?」。三浦先生の言葉は子育てと家族、政治がつながっていることを示唆しています。