CASE3 子どもが信号無視をして交通事故。損害賠償は減額?

Q. 子どもが車との接触事故に遭い、けがをしてしまいました。ただ、子どもの話などを聞くと、子どもが信号無視をして飛び出したみたいなんです。この場合、治療費とかの損害賠償は全額もらえるのでしょうか。

A. 交通事故が起き、被害者にも落ち度がある場合には、過失相殺といって損害賠償額が減額されます。過失相殺とは、損害の公平な分担を趣旨とするものです(民法722条2項)。

例を出してみましょう。脇見運転で第三者をけがさせてしまった場合と、きちんと前方確認していたのに突然第三者が飛び出してきてけがをさせてしまった場合、両者を同じように扱うのは何か釈然としませんね。そこで登場するのが、損害賠償額を決める際の過失相殺なのです。どれくらい減額されるのかは、状況次第です。

 では、これと同じ考え方を子どもの場合にも当てはめてよいのでしょうか。子どもは一般的には未熟であるし、運転をする大人のほうが気を付けないといけないのではないでしょうか。

 最高裁判所は、一定の場合には過失相殺もOKとしました。一定の場合とは子どもに事理弁識能力、すなわち物事の善しあしを一定程度分かる能力が備わっている場合です。どのような場合にその能力が認められるかは事案によりけりですが、5~6歳でも認められた例があります。

 また、子どもに事理弁識能力が認められなかったとしても、被害者「側」に過失があれば過失相殺される場合があります。被害者側とは、被害者と身分上ないしは生活関係上一体を成すとみられるような関係にある者のことをいいます。ざっくりというと、お財布がひとつといえる場合です。子どもの両親はこれに当たりますね。お母さんと散歩して、目を離した隙に突然子どもが信号無視をして飛び出した場合はこれに当たると思います。幼稚園のお散歩のときはどうでしょうか。子どもの両親はいませんが保育士がいます。保育士の目を離した隙に飛び出した場合も同じことがいえるのでしょうか。この場合、最高裁判所は保育士が保育園の被用者(雇われている人であって子どもと一体ではない)として子どもを監護していたにすぎない場合には、被害者側に当たらないとしています。

 状況によっては、子どもに落ち度がある場合には過失相殺によって損害賠償額が減額されてしまいかねない可能性があるということです。子どもに落ち度がないとしても、お母さんに過失がある場合には減額の可能性があります。

 これらは難しい話ですので、弁護士にご相談されることをおすすめします。

(取材・文/小泉恵里 写真/鈴木愛子)