CASE2 子どもが自転車運転中に事故を起こし、加害者に

Q. 子どもが自転車を運転中、人にぶつかってけがをさせてしまいました。けがの治療費は支払わないといけないと思いますが、他にはどんな賠償をすることになるのでしょうか。

A. まず、自転車を運転していた子どもに対しては民法709条に基づく損害賠償請求をされることが考えられます。しかし、子どもの年齢にもよりますが、責任能力がないとしてそもそも損害賠償責任を負わない可能性があります。その場合には子どもの親に対して民法714条に基づく損害賠償請求がなされるでしょう。

 そこでの損害項目は多岐にわたります。治療費はもちろんですが、今回の事故を原因として被害者の方が寝たきりになってしまった場合には、将来における介護費用が多額になる可能性も十分あります。

 実際に神戸地裁にてそのような判断がなされました。この事例は、自転車に乗っていた当時小学校5年生だった子どもが歩行者と衝突したというものです。裁判では、被害者側は子どもが高速で坂を下るなど交通ルールに違反した危険な行為をしており、子どもの母親の監督義務違反を主張しました。一方、母親側は子どもが適切にハンドルを操作しており、母親からライトの点灯やヘルメット着用を指導していたと主張しました。

 判決では、子どもが時速20~30キロメートルで走行し、前方不注視であることが事故の原因であると認定。事故時はヘルメット未着用であったことなどから母親の指導や注意が功を奏しておらず、監督義務を果たしていないとして母親に約9500万円の賠償を命じました。

 親が子どもに対して普段から自転車の運転について注意していたとしても、実際に子どもが言いつけを守っていなければ、その言い分は通らないということが分かります。またヘルメット未着用、というところが重視されたのもポイントです。加害者側がヘルメットを着用していたか否かは、被害者側にはあまり関係がないかもしれません。それでも、「親が交通マナーについて、きちんと指導しており、子どもがそれを守っていたか」という判断基準にはなるということです。

 他にも、無灯火で自転車を運転していた高校生が歩行者に追突した事故で約5000万円の支払いを命じるものが横浜地裁で出されたことがあります。子どもの責任能力が認められると、多額となり得る損害賠償をその子ども自身が負担することにもなりかねません。

 現在は自転車事故に対応する保険もあるので、万が一に備えてそのような保険に加入するということも考えてみてもいいかもしれませんね。

写真はイメージです
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