スキー人口減少と若者減少は、どちらが先に起こった?

DUAL編集部 グローバル化の流れで、子どもに海外留学させることは必要でしょうか。

平田 特に地方の場合、東京との環境格差を埋めるために海外に行かせるのは、妥当性があると思います。例えば、兵庫県豊岡市は、東京水準ではなく最初から世界水準を目指すという方針を打ち出しています。高校生のうちに、短期でもいいから海外に行かせて、「海外ってこんな感じだよ」という経験させるためならいいと思います。

DUAL編集部  平田さんは、著書『下り坂をそろそろと下る』の中で、「スキー人口が減ったから若者が減った」という考察をしています。

平田 統計学者であれば「若者が減ったから、スキー人口が減った」と考えますが、劇作家である私は、「スキー人口が減ったから、若者人口が減った」と考えるんです。スキーは合法的に女性を一泊旅行に誘える最も健全な手段でしたから。半ば冗談みたいな話ですが、今、特に地方には出会いの場が足りないんですよね。昔はジャズ喫茶や古書店といった場がありましたが、現代の大規模ショッピングセンターでは、恋は育たない。

DUAL編集部  お見合いパーティーを行う地方自治体もあります。

平田 行政がやる場合、いかにセンス良くできるかが肝だと思います。女性だけのチームを作って企画するのがいいんじゃないでしょうか。子育て支援や人口減少対策の話なのに、男性だけでやるから、女性の視点からズレたものになる。女性に選ばれない自治体は、この先滅びます。

 そして長期的には、街全体でセンスを良くして、リベラルでオープンマインドな街を目指していかなければいけないと思います。地方が生き残るためには、今から20年先を見据えて、センスや多様性理解といった「文化資本」を育てる教育をやっていくことが大切です。

DUAL編集部  平田さんが主宰する青年団は、子だくさんの劇団だそうですね。

平田 今、子どもが40人もいて、小劇場で圧倒的に多いです。僕は1990年代後半に、「女性が出産しても女優活動を続けられる集団にする」と宣言したんです。そして、子育て中の団員は男女限らず、舞台の仕込みや片付けを免除するなどのルールを作りました。当時は、若い男性などから、「それは不平等じゃないか」という声が挙がったのですが、僕は、「このほうが有能な女性が入ってくるし残ってくれるから、全体のためになる。多分、世の中こうなっていくよ」という話をしました。

 今はほとんどの女性が出産しても役者を続けています。旅公演に子どもを連れてくる劇団員もいて、僕も含めてみんなで面倒を見ています。その負担は実はたいしたことはなくて、気持ちの問題ですね。もちろん、できるだけ公的な保育所、一時預かりなどを使いますが、最後のセーフティーネットとして、コミュニティーがあるっていうのは強い。劇団員は特につながりが強いので、子育ての情報交換をしたり、ベビーカーを使い回したりしています。

 たくさん生まれるようになった背景には、「周りが産むと、皆が産みやすい」というのもあるんです。先日、ある政治家に聞いた話では、中小企業でも、すごく産む企業と全然産まない企業があるんだそうです。周りが産み始めると、産むのが当たり前になり、それを前提にして会社の仕組みができていくので、より産みやすくなるんです。だから、企業やコミュニティー単位での局所的な努力も大事だなと思います。