演劇教育で、子ども達のコミュニケーション能力を養う

DUAL編集部  平田さんは、演劇を使ったコミュニケーション教育を小中学生向けにやられています。演劇を通して子ども達はどんなことを学びますか。

平田 演劇というのは、もともと「なんとかごっこ」です。子どもは、ごっこ遊びの中でいろんな役割を演じることで、社会性やコミュニケーション能力を身に付けていきます。だから、それを学校教育に取り入れていこうというのが、演劇教育の基本的な考えです。

 例えば、文章の中に空欄があって、「ここで何と言う?」というのを考えて、実際に動きをつけてやってみようとか。日韓併合の歴史を学んで、日本と韓国両方の立場で劇を創りましょう、とか。演劇教育はこのような参加型の、いわゆる「アクティブ・ラーニング」の形をとります。

 近年は文科省も、演劇が、色々な役割分担ができる点、合意形成能力や自尊感情を育てる点に注目していて、少しずつ学校教育に演劇が取り入れられるようになりました。他の先進国では、高校の選択科目で、音楽、美術と並んで必ず演劇があるので、日本でもそうなったらいいと思います。

DUAL編集部  「コミュニケーション能力」や、「アクティブ・ラーニング」は今後も教育の中で重視される傾向にありますか。

平田 2020年の大学入試改革が一つの大きなきっかけとなり、これからは、そういった授業をやらざるを得なくなると思います。特に、集団ディスカッションを入試に課す大学はこれから増えるでしょう。すると、初めて会った人といきなり議論しなければならないわけですから、普段そうした機会が少ない地方の子ほど、集団コミュニケーションの力を養っておく必要があります。

DUAL編集部 今の子ども達のコミュニケーション能力について、どう思われますか。

平田 今の子どものコミュニケーション能力はそれほど悪くないと思います。ただ、グローバル化により、子どもに要求されるコミュニケーション能力のレベルが高くなっていて。それと反対に、子どもが育つ環境は、コミュニケーション能力が必要ない方向に行っています。一人っ子で、優しいお母さんで。お菓子は駄菓子屋じゃなくてコンビニで買える。駄菓子屋って、店主とのやり取りがものをいうので、コミュニケーション能力の高い子が得するシステムだったんですよね。

 また、コミュニケーション能力に長けている子もいる一方で、苦手な子の発見が遅れることが心配です。偏差値の高い子ほど、その場はしのげるので、そのまま大人になってしまう。そして20歳過ぎてから「女の子と普通に会話ができない」みたいなことになりがちです。ディベートはできてもデートに誘えないとか。誘うより前にディベートしてしまうとか。