「日本はもう成長しない」という寂しさに向き合うことが一歩

DUAL編集部 なぜ、未来へ投資できないのでしょうか。

平田 政治の中枢の人々が「まだ日本は成長する」と信じているからでしょう。もう、ほとんどの国民は信じていませんが、なぜか国の真ん中にいる人だけが宗教のように信じている。成長するなら、その分野に投資するのはいいですよ、ダムとか。でも、もう成長しないのだから、“人”に投資するしかないんです。しかし、現状、それができていません。

講談社提供
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DUAL編集部 どうしたら、未来へ投資する方向に向かえますか。

平田 結局それもマインドの問題で、3つの「寂しさ」に向き合うことが必要です。1つは「日本はもう成長しない」という寂しさ。次に、「日本はもはや工業立国ではない」という寂しさ。僕は1962年生まれで、高度成長の真っただ中に育ったので、『プロジェクトX』などを見るとウルッときてしまう世代なのですが、そこをぐっと我慢し、寂しさを受け入れないと。

 そして3つ目の寂しさは、「日本はもはやアジア唯一の先進国ではない」ということ。この寂しさを受け入れられないために、韓国や中国に嫌悪感を抱いて、「韓国や中国は何かずるいことをして、日本に勝っているのではないか」と思いたがる人達がいます。

DUAL編集部 日本が再び成長する可能性はないのでしょうか。

平田 成長は、しないでしょう。今、モノが余っているのは日本だけではなく、世界中で需要と供給のバランス崩れ、供給過多になっています。唯一、総需要が伸びるはずの中国に関しても、今のグローバル社会では、中国15億人のうちの3~4億人しか、中間層になれないのではないかと思います。今はまだ、中間層が2億人くらいなので伸びしろがありますが、やがて限界がきます。

 すると、中国の成長が止まった段階で、世界経済が相当厳しいことになります。そこに、「寂しさ」を受け入れられないマインドが加わると、日本が受ける打撃はさらに大きくなるでしょう。このマインドのゆがみを変えていかないと、日本は「下り坂」どころか「急激な坂」を下ることになってしまいます。

※24日公開予定の後編では、平田さんが考える「理想の教育の在り方」などをご紹介します。

(取材・文/星野ハイジ 撮影/品田裕美)

※平田さんの新著「下り坂をそろそろと下る(講談社刊)」でも、母親や子育てを取り巻く現状分析、地方再生などについて、平田さんによる鋭い考察が読めます。