都市部以外の多くの自治体は、子どもが欲しくてたまらない

DUAL編集部 東京と地方では、抱えている問題は異なりますか。

平田 仕事柄、地方を訪れることが多いのですが、東京と地方では事情は全く異なります。例えば待機児童問題は、都会を中心とした200くらいの自治体の問題で、残り1400の自治体は、子どもが欲しくてたまらない状況です。

 しかし地方には男女の「偶然の出会い」がないという問題がある。それと、「諦め」があります。地方の場合、高校入学の時点で、普通科、商業高校、工業高校の3種類くらいの選択肢しかなく、偏差値によって輪切りにされてしまいますよね。その段階で交友関係や選択肢が決められて、人生を諦めてしまうんです。地方においては、そのあたりを解消していくほうがいいのではと思っています。

 一方で僕は、地方には希望もあると感じています。例えば、岡山県の奈義町は人口6000人ほどの街ですが、高校生まで医療費を全部無料にするなど、ここ数年、「子育てするなら奈義町で」というフレーズを掲げて地道にやっています。すると、若い子育て世代が引っ越してきたりして、去年は合計特殊出生率2.81と、日本一になりました。

 奈義町は教育にも力を入れていて、2020年の大学入試改革を見据え、小中学校で既にアクティブ・ラーニングを導入しています。田舎に対して親が一番心配するのは、子どもの教育なので、このように教育レベルの高さをウリにして、人を呼び込む自治体が出てきています。

 東京一極集中といっても、東京から同心円で差があるのではなくて、まだら状に地方間の差があるんです。いつまでも変われないままの自治体もある。恐らく、東京オリンピックまでのあと5年くらいが、地方創生の最後の正念場になると思います。

DUAL編集部 うまくいっている自治体の特徴は。

平田 岡山県奈義町や兵庫県豊岡市、香川県小豆島など、成功している地方自治体は、過去の厳しい行政改革を経て、現在、財政状態が健全です。そして首長達は口をそろえて、「節約してためたお金をすべて、未来への投資に充てる」とおっしゃっています。

 これは、日本全体にもいえることです。今こそ日本は、これ以上借金を増やさずに、教育や子育てや福祉に徹底的にお金をかけるべき。しかし残念ながら、日本全体としては未来への投資の余裕が無くなってしまっています。OECD加盟国の中でも、日本はGDP比率の教育の予算が極端に少ない。