強烈な性格の父親。その反動で教師を目指した学生時代
子どものころは、真面目で先生から指名されて委員をやらされるタイプだったという黒田さん。
「小学生のころからずっと先生を目指していて。父は強い個性を持つ人だったので、自分は穏やかに生きたいと思っていました」
黒田さんの父親は、東横イン創業者の西田憲正さん。蒲田に第一号店がオープンしたのは、黒田さんが10歳のときでした。
「父はいつも仕事のことを考えていました。家にいても母をつかまえては仕事の話、会社に電話してはあれこれ指示していました。私たち姉妹が話題になっているのは聞いたことがないくらい。ファミレスで大きな声で数億円の話をする父を少し恥ずかしいと思ったこともありました」
そんな父親からホテル経営を「継がせたい」と言われたことは一度もありませんでした。
「学生時代は世界史の先生を目指し、大学院で史学を専攻。母校の高校で非常勤講師をしていました。でも、実際にやってみると先生に向いてないなと(笑)。そこで初めて就職を考えたのですが、いまさら就職先がなくて。そこで、父の会社に就職することにしました」
子どもを産むまでと決め、“こしかけ”のつもりで入社
2002年4月に東横インに入社。新規ホテルの立ち上げを担当する営業企画部に配属されました。
「名刺の受け取り方をはじめ、上司にイチから教えてもらいました。会社で父と会うことはなく、社長の娘だからといって特別扱いされてはいなかったと思います」
その間結婚し、数店舗のオープンを経験した後、第一子の出産・育児のため2004年に退社。当時は「東横インは父の会社」と思っていたので、辞めることに未練はなかったそう。
「入社した時点で婚約が決まっていたので、子どもを産むまでの“こしかけ”のつもりでした。でもいつのころからか、自分もどこかで起業したい、専業主婦で何もしないというのは私にはないな、と思うようになりました」