歌の練習は家で。風呂で歌っていたら「父さん、まずいよ」と息子に言われた
デビューしてからずっと、歌の練習は家でしています。お決まりは、和室。雨戸を閉め切って大声で歌うんです。風呂でもよく練習します。風呂で歌うのって、気持ちがよくて(笑)。いつだったか風呂で大声で練習していたら帰宅した次男から「父さん、まずいよ。坂の下まで丸聞こえだよ!」と言われて焦りました。
家族は歌に関しては寛大です。僕が和室で歌い始めると、長男と次男と三男がドアを閉めに来て、あとは放っておいてくれるんです。邪魔しちゃいけないと気を使ってくれているのでしょう。
ただ、四男だけは別。僕が熱唱しているときも「おとーさん、おとーさーん」って話しかけてきます。「なぜ、今?」と思うくらいに(笑)。四男が生まれたころには僕はすでにデビューしていたので、彼にとっては僕が歌っていることが上の子達よりは当たり前のことなのかもしれません。きっと上の子達より、歌が近くにあるんでしょうね。
“教育パパ&ママ”に育てられ、山ほど習い事をやらされたけれど……
僕の両親はいわゆる“教育パパ&ママ”でした。というわけで子どものころは習い事もたくさんしていました。お絵描き、そろばん、ピアノ、プール、英会話に切り絵……。切り絵だけは、今も趣味で続けています。
習い事が多いことに対しては特別な思いはありませんでした。というよりも、当時は親の言うことは「絶対」であり、「間違っていない」と思うから逆らうなんて考えられませんでした。言われた通りに習い事をし、言われた通りに勉強していました。
そのころの僕のクセは、爪をかむこと。かなり激しく爪をかんでいました。そのうち、指の皮もむしり始め、手はいつも絆創膏だらけでした。
今思うと、あれはストレスだったのだろうなと思います。好きでもない習い事や勉強をさせられていることへのストレス。好きなことを思うようにできないストレス。でも子どもの僕には、それがストレスになっているなんて自覚はありません。ただ親の言うことをきいて、いい子にしていただけ。でも正直な思いが、爪をかんだり、指の皮をむしったりという行為として表れていたのでしょう。だからといって、今、親を恨んでいるわけじゃありません。ピアノだけは好きになれず、むしろ嫌いでしたけど。
あるとき、母親に言われました。
「子どものころのあなたに、歌を習わせてあげたらよかったと思うのよ」