会議で暴君がエリートを黙らせるのは、面白いショーかもしれません。でも、暴君はあなたの味方ではありません。暴言ショーであなたを密かに震え上がらせ、自分は罵倒される側ではなく、する側なのだと思い込ませることで、思い通りにしようとしているのです。コロッセオで奴隷がライオンに食い殺されるのを見て歓声を上げている人々は、自分がライオンと対峙することは望まないでしょう。暴言ヒーローは、観客に観客であり続けることを望ませ、巧みに利用するのです。

暴君を黙らせる、簡単な方法ってなんだろう?

 では、そんな暴君を黙らせるには、少なくとも言いたい放題にさせないためには、どうすればいいのでしょうか。理性的で弁の立つ秀才を連れてくる? 裏からコワイ人に脅してもらう? いやいや、もっと簡単。

 会議の出席者が、バカ呼ばわりされようとも、発言するのをやめなければいいのです。

 大人気ないとか、感情的だと冷笑されることを怖がらず、自分が実感したことを喋り続けること。たとえ暴君が超絶物知りであったとしても、あなたの頭の中に手を突っ込むことはできません。どんな権力者でも、あなたが今朝何を食べて何を考えたかというささいなことすら、知ることはできないのです。

 だから、もしもあなたが本当に怒っていることや、おかしいと思うことや、知りたいことや、大事にしていることがあるなら、発言することを恐がらなくても大丈夫。あなた以外の誰もそれを知らないし、語ることはできないのですから。

会社員のころ、私は会議で発言する“空気の読めないやつ”だったけど

 会社員だった頃、私は会議でしょっちゅう発言するので、空気の読めないやつだと思われていました。でも、じゃあ空気を読んで意見を言わない人の方が偉いかというと、そんなこともありません。会議で沈黙していた人が、何かを変えたことは一度もないからです。どうせどちらも偉くないのなら、言いたいことも言わずに愚痴ばかりで生きていくのは嫌だし、今さらバカと言われようとべつにいいや!と思っていました。