会社の会議で、経験がないですか? 多くの人が発言しないでいると、誰よりも口が悪く狡猾な、あるいは誰よりも考え足らずで、聞く耳を持たない人の意見が通ってしまう。優秀な人はいくらでもいるのに、彼らは黙っているのです。バカとか、みっともないと言われることを恐れて、口をつぐんでしまうのですね。

無口な賢者より、饒舌な暴君がのさばる理由

 きっと、下手に何か言って絡まれるのは、得策でないと思うのでしょう。会議がより有意義なものになることよりも、自分が恥をかかされずにすむ方を優先するのです。

 でも悲しいかな、そのオトナの判断が、傍目には「言い負かされたへなちょこエリート」にしか見えません。結果、無口な賢者よりも饒舌な暴君の方が「頼りになる正直者」に見えてしまうというわけです。

パースは、秋の終わり。雨が多く、虹の季節でもあります。夏場にカリカリになっていた芝や草木が、一気に元気になります。冬枯れではなく、緑滴る冬です。ストームの翌朝の空に。
パースは、秋の終わり。雨が多く、虹の季節でもあります。夏場にカリカリになっていた芝や草木が、一気に元気になります。冬枯れではなく、緑滴る冬です。ストームの翌朝の空に。

会議で発言する人をせせら笑う人たち

 なにもエリートに限りません。あまり仕事の成績が良くなくて、能力に自信のない人が、バカと言われ続けているうちに、本当に自分には発言する権利なんてないのだと思いこんでしまうことがあります。

 すると、他の発言者に対して「お前だってバカのくせに、なに勘違いして意見を言っているんだよ」と憎悪を抱くようになるのです。「バカのくせに発言するお前よりは、身の程を知って黙っている自分の方が賢い」とすら考えるようになります。

 そして、自分を侮辱した暴君のサイドに立って「あいつ、バカだよな」と発言者をせせら笑うのです。暴君と戦うよりは、自分以上のバカを罵る方が、抑圧の発散の手段としては手軽なのでしょう。

 暴君は、うはうはです。罵った相手がやがて自分の同調者になり、罵れば罵るほど味方が増え、利口者は黙るのですから。