家のローンに子どもの教育費。目の前のお金のやりくりで今は精一杯だけど、ぼんやりと「老後」のことも気にかかる……。一体、老後のためにどれくらいためておけば安心なの? 老後資金の基本的な考え方と、必要な貯蓄額の算出法、そして「効果的なため方」について、上下2本の記事でお送りします。

「老後」の暮らし方によって必要金額は変わる!

 「老後にいくら必要ですか?」

 「定年までにいくらためたら安心できますか?」

 老後を考えたときに、多くの人が抱く疑問がこのようなことではないでしょうか。

 私もズバリ〇〇万円です! と言ってあげたいのですが、残念ながら、この答えは「自分」にしか出すことはできません。

 だって、老後は毎日自宅にいてDVDを見て、本を読んで過ごす夫婦と、外食や旅行にバンバン出かける夫婦とでは、必要な生活費は違いますよね?

 共働きのDUAL夫婦なら外食の習慣があると思いますが、週に1万円分の外食をするかしないかで、1年間で約50万円が変わります。60歳から70歳までの10年間、「週1の外食」を続けたら、その差は500万円にもなります。

 また、持ち家の家庭と賃貸の家庭でも、必要なお金は変わります。

 家賃が月12万円とすると、年間144万円の住居費がかかります。ローンを返済し終わった持ち家の固定資産税が年間15万円だとすると、その差は1年間で129万円。60歳から85歳までの25年間で総額3225万円もの差になります。

 週に1回1万円の外食の有無や、賃貸と持ち家の差を比較すると、それだけで、必要な老後資金には最大3725万円の違いがでます。すごい差ですよね。

 このように、一口に「老後」といっても、その環境やお金の使い方は千差万別。だからこそ、「わが家」の場合をシミュレーションしてみることが、唯一の解決法なのです。

 「でも、いくらシミュレーションしても、将来はどうなるか分からないでしょ?」と思う人もいるでしょう。

 はい、その通りです。国や会社の制度はもちろんのこと、あなたの思い描く老後の生活そのものも、年とともに変わるかもしれません。ただ、そこで何もしないでいると、漠然とした不安からは脱出できません。

 将来はどうなるか分からないからこそ、何パターンでも考えることができるのが、シミュレーションのいいところ。「もしも、老後の年金が夫婦で23万円なら」、「もしも、老後の年金が夫婦で33万円なら」というように、気になることを取り込みながら、老後に必要な貯蓄額の目安を出してみましょう。