子どもを言い訳にせず後悔しない人生を歩みたい

走ることが大好きな奥宮さん。何事にも全力投球な姿が写真からもうかがえる
走ることが大好きな奥宮さん。何事にも全力投球な姿が写真からもうかがえる

――それまでは自衛隊をしながら競技に参加されていたわけですが、プロとしてやっていこうと思われたきっかけとは?

 日本山岳耐久レース以降、本格的にトレイルランニングに取り組みはじめたんですが、公務員としてではなく、仕事として制限なく自由にやりたいという気持ちがあったので転職を決意しました。

 安定した公務員じゃなくなるわけですから、妻は当然反対しましたね。当時、0歳と4歳と6歳の子どもがいましたから、公務員を辞めるんだったら3人も子どもをつくらなかったって。仰るとおりですって感じですよね……。それで、自衛隊の時と同じだけの給料がもらえることと、転居がないことを条件に許してもらいました。

 新しい勤め先は会社全体で僕を応援してくれ、他にないくらいよくしてもらいました。そこには5年勤めていたんですが、サポートのおかげもあって徐々に個人的なトレイルランニングの仕事が増えてきたんですよ。でも、会社での仕事も週末レースがあるからとかそんな理由でおざなりになっていましたし、かといってトレイルランニングの方に本腰を入れられているわけでもなく、両方とも半端。それが嫌だったんです。こんなことならどちらかに専念したいと思って独立を考えました。

 もちろん、妻は大反対!(笑)。当時の社長にも両親にも正気かって言われたんですけど、自分が本気じゃないのにまわりが本気でやってくれるわけもないし、やっぱり全力で打ち込まないと駄目だなって。先のことなんて何もわからないんですけど、少なくとも今のままやりたいことをやらないで会社員をしていたら、絶対後悔すると思ったんですよね。なんとなくではありますが、収支の見通しもできたのでチャンスがあるなら覚悟を決めようと。

 こういう一歩踏み出す時には、「自分には子どもがいて家庭を守らなければいけない」という立派な理由を、言い訳にして諦めてしまいがちですよね。「あの時お前らがいたから独立できなかったんだ」と。僕はそれを言いたくなかった。本当はもっと子どもと遊んであげたいし、よい景色を見せてあげたいし、いろんな所に連れていってあげたい。でも、結局仕事があってあまり子どもと接する時間が取れないのはみんな同じですよね。だから、後悔しない人生を歩めるように、仕事も、子どもと遊ぶことも楽しめるようにしたいと思っています。