大人向けの料理や空間を子どもと一緒に楽しめる高級レストランをご紹介してきたこの連載。今回は少しばかり趣向を変えて、人気の高いホテルのメインダイニングをご紹介します。東京の玄関口、東京駅丸の内駅舎に広がる「東京ステーションホテル」を訪ねました。

長い廊下を歩きながら高まるおいしい時間への期待

 「ブラン ルージュ」。フランス語で白と赤という意味を持つこのレストランは、東京駅丸の内側の駅舎内に広がる「東京ステーションホテル」の2階にある。ホテルにはメインダイニングと呼ばれる格式高い店があることが多く、ブラン ルージュも東京ステーションホテルのメインダイニングに当たる。

 入口からレストランまで続く長い廊下のじゅうたんには、ばらのツタをイメージした優雅な模様が施されている。アイアンのパーテションもばら模様。お昼には自然光が差し込み、夜は柔らかな照明が足元を照らす廊下を歩くうち、この先に待つおいしい時間への期待が胸に静かに広がっていく。パパやママに手を引かれた子どもにも、その思いはきっと伝わっているだろう

 ホテルの歴史を尋ねてみれば、レストランの魅力は一層膨らむだろう。1914(大正3)年に壮麗なドームを備えた東京駅(中央停車場)が開業し、その翌年、駅舎の中にホテルが誕生した。堅牢な造りゆえ、関東大震災にも耐えたが、1945(昭和20)年の空襲によって屋根が消失。赤レンガの一部の躯体だけが残った。1951年になってホテルの営業が再開されてからは、内田百閒、川端康成、松本清張ら著名な作家が通い、文化の香り漂うホテルに。2012年に駅舎が100年前の姿に復原され、その中のホテルはリニューアルオープンされた。東京駅の往時の姿を懐かしむ人達やクラシカルな佇まいに引かれたゲストがホテルには多数訪れている。 

レストランへの長い廊下はじゅうたんが敷き詰められ、重厚な空気が漂う。パーテションのばらのモチーフは、改装前のメインダイニング「ばら」のイメージ。ここにも歴史を感じる
レストランへの長い廊下はじゅうたんが敷き詰められ、重厚な空気が漂う。パーテションのばらのモチーフは、改装前のメインダイニング「ばら」のイメージ。ここにも歴史を感じる

アート作品「時代抄」(工藤晴也作)が廊下の壁に飾られている。創建当時の東京駅丸の内駅舎南ドームを飾っていた石こうレリーフの断片を用いている
アート作品「時代抄」(工藤晴也作)が廊下の壁に飾られている。創建当時の東京駅丸の内駅舎南ドームを飾っていた石こうレリーフの断片を用いている

長い歴史を持ち、国の重要文化財である東京駅丸の内駅舎(写真提供:東京ステーションホテル)
長い歴史を持ち、国の重要文化財である東京駅丸の内駅舎(写真提供:東京ステーションホテル)