娘に向いた企業2社をアドバイス。結果、2社とも内定

成毛 娘に向いていると思われる企業は2社ぐらいしかなかった。そこで、とある大手商社の穀物トレーディングに行くか、大手広告会社の営業に行くか、どちらかを狙えとアドバイスしました。結果、2社とも内定をもらい、結局、穀物のトレーダーへの道を選びましたね。

 お嬢さんには「商社の穀物のトレーディングが向いている」と考えた理由はどこにあったのでしょうか?

成毛 どんな仕事が向くか向かないか、自分の娘を見てれば分かりますよ。実は“一卵性双生児”と言われるくらい性格が私似でね(笑)。穀物のトレーディングがいいと言ったのは、これからの世の中、伸びていくのは穀物だという確信があるから。しかも先進国の家畜の餌である小麦は絶対に伸びる。そういう話を娘にすれば分からないなりに「なるほどね」ってちゃんと納得するんです。就職活動をしている学生が、世の中のことを理解しているわけじゃない。だったら分かっている大人の意見を聞くことも能力の一つです。

 それでも、海外貿易に携わるには英語能力も必要になります。採用試験にも英語でのレジュメが必須。さらには社内で留学やTOEIC試験が義務付けられているようですが……。

成毛 娘は英語ができないので、入社試験のときはある程度手伝いました(笑)。でも、それでもいいんです。大事なのは英語力より、入社後、仕事ができるかどうかですから。商社に入ってからもTOEICの試験で800点以上じゃないと海外駐在はできないなどのルールがありましたが、「僕は英語なんて勉強しなくていい」と言い続けました。「そんな勉強をする時間があったら、穀物トレーディングの勉強をしろ」と。英語ができる人はごまんといるけれど、穀物トレーディングの専門知識を身に付けている人間はほとんどいない。どちらの能力のほうが価値が高いかといえば、絶対的に後者です。

 目的さえはっきりしていれば語学力なんて後からついてくる。実際、娘は海外出張中に専門分野での商談もこなせるほどあっという間に語学力も身に付けましたよ。留学はしてもいい。でも、何のためにするのかということを忘れてはいけません。

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 ここまで大きく異なるパクさんと成毛さんの教育方針。しかし意外にも、共通点もたくさんありました。明日に続く留学特集第5回では、両者に共通する教育のポイントを見ながら、真にグローバルに活躍できる人材に育てるために、親ができること、その5カ条を探っていきます。

(取材・文/玉居子泰子)