厳しくも価値あるシンガポールの高校教育
パク 娘の高校入学は6年前。ちょうどシンガポールの教育の変換期で、学校がIB(国際バカロレア)を取り入れた教育に変わりました。そのために、本人もとても苦労しましたが、非常に意識の高い教育を受けられたとも思います。
IBの良いところはとにかく考えさせる教育を行うところ。日本の一般的な高校教育のように暗記が中心となるのではなく、考えや意見を書かせます。「本を一冊読んでそれについてエッセーを書きなさい」という課題が出たりだとか、化学の授業でも「ダイナマイトの発明について、メリット・デメリットを踏まえたあなたの意見を書きなさい」なんていう問題が出たりするんです。
答えがあるものではなく、英語で、しかも自分で考え、執筆する教育を受けられたことは、娘にとっては非常に良いものだったと感じています。ただし、IBになると母国語(パクさんのお嬢さんの場合は日本語)の授業も取らなくてはならず、英語に加えて中国語を学ばせたいという思惑は外れてしまったんですけれどね。
パク 娘に関して言えば厳しい環境に身を置いて、以前よりもずっと自分の意思が出てきたし、雑草のように粘り強くたくましくなりましたね。毎年夏休みには数週間のボランティア活動をするなど、自分の関心のあることに対して積極的に行動できるようになっています。ただ、現在シンガポールのインター校は、娘の入学時よりもさらに厳しい条件の試験になっているようです。高校に入学する段階で、かなりの高レベルの英語力がないと授業についていけなくなっている。インド、インドネシア、マレーシア、そして中国と、近隣のアジア諸国からたくさんの優秀な学生が集まってきているようです。
彼らの目的は、卒業後にアメリカをはじめとする欧米諸国の高水準の大学に入学すること。そのためのステップとしてシンガポールのインター校に集まってきているのです。そういった意味でもシンガポールの教育は近年非常にレベルが上がり、おすすめではありますが、逆にそうした優秀な学生と切磋琢磨していくには入学時からかなりの英語力・思考力が必要で、相当な覚悟が要るでしょう。