アメリカの人気は落ち目? 盛り上がるASEAN留学

 留学期間に加えて、大きく変わってきたのが渡航先です。

 上の表を見ると「日本人の留学先として数が多いのは、依然としてアメリカ合衆国。でもその割合は下がってきている」と大川さんは指摘します。

 文部科学省が出したデータによると、アメリカの大学などに在籍する日本人学生数は、1998年の4万6406人から右肩下がりで2013年で1万9569人に減少。2015年3月31日付けの上の表によると、1万2434人にさらに減っています。一方、急激に留学先として選ぶ日本人学生が増えているのが、中国です。

 DUALのアンケートでも「どの国に子どもを留学させたいか?」という質問に対し、多いのはアメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリアなどの英語圏ですが、その他のヨーロッパ諸国に比べて、シンガポールという答えが上位に上がってきているのが分かります。

 「ASEAN諸国は、今、注目の留学先ですね。アメリカやイギリスなど欧米の大学よりも授業料は安く、世界中から優秀な人が集まってきています。シンガポールの国立大学の学力レベルは東京大学を抜いたともいわれますし、タイのバンコクなどの大学もレベルが高く、大学以降の留学先としては注目すべきです」(大川さん)

 シンガポールが留学先として人気なのは、多民族国家ならではの中国語を学ぶチャンスがあるから、ともいえます。中国への留学生数も以前より増えています。

 「日本国内の大手商社でも、中検やHSK(中国語検定試験)など、中国語の試験を社員に受けさせるところが出てきています。HSKは年間2万人が受験しており、中国語ができることがビジネスに役立つ時代になってきている。そのためもあり、中国、台湾などの中国語圏への留学も増えています。特にシンガポールは英語と中国語の両方を学ぶ機会も多いため、人気の留学先となっていますね」(林さん)

 これまでのアメリカへの英語留学一色から、留学先のバリエーションはさらに増えていきそうです。

 第2回では、そんな多種多様な選択肢の中から、どんな留学を選べばいいのか、気になるコストや問題点についても探っていきましょう。

林 隆樹さん
1956年東京都生まれ。早稲田大学大学院在学中にフランスに1年間留学する。帰国後は翻訳会社に就職。92年、米国に拠点を持ち世界中に展開する英語学校の日本支社長に就任し、以後留学業界に関わる。2001年社団法人日本青少年育成協会国際交流委員会、2004年より同協会理事に就任。2000年より一般社団法人JAOS海外留学協議会事務局長、2013年より専務理事。2011年、一般社団法人J-CROSS留学サービス審査機構の立ち上げにかかわり同機構理事。著書に『成功する留学、交換留学編』(共著)など。

大川彰一さん
1970年京都市生まれ。国際教育コンサルタント。高校1年生のときに姉妹都市交流でボストンに渡米。大学卒業後はセールスやマーケティングに関わり、その後カナダに半年間留学。帰国後は大手留学エージェントのチーフ・カウンセラーとして1000名以上の留学生に関わる。その後、米国国務省認定の教育団体に6年間所属し、グローバル人材育成に尽力。現在は、“留学ソムリエ”と称した事業を行い、留学に関わるコンサルティングや講演・執筆、カウンセリングなどを多く行う。留学ソムリエのホームページでは日本の伝統文化の国内外に向けた紹介・発信も行っている。 http://www.ryugakusommelier.com/

(ライター/玉居子泰子、図デザイン/Coccoto 柳沼恭子)