レジリエンス・ゴムボールを目指して

──子どもを育てるうえで、気をつけるべきことは。

 一番大切なのは、いじめられても心が折れない耐性を育てること。小さいころから人と触れ合う機会を多く持てば、そこで傷つけられたり、挫折したりすることを経験できます。その経験によって、我慢する方法や妥協する方法を身につけることができるのです。そうなれば、いじめられたときにも、ポジティブに考え続けることができるでしょう。

 「レジリエンス」という言葉をご存じですか。弾力や回復力を意味し、いじめ問題では、いじめにあっても、それをしなやかに受け止め、したたかに乗り越え、いじめに屈しないことです。つまり、「もとに戻る力」のことですね。

 ゴムボールをイメージするとわかりやすいです。ゴムボールは、手でぐっと押さえると凹みますが、手を離すともとの形に戻りますね。この「圧力が加わったときに押し返す力」と「圧力が外れたときにもとに戻る力」が、レジリエンスです。

 レジリエンスを高めるには、集団に入れていろんな人と話をさせることが重要です。思い通りにいかない経験を重ねることで、どこで折り合いをつければいいのかといった交渉力を身につけていくのです。そのため海外では、子ども同士でいじめを解決する方法も試されています。人間関係を修復するのが目的なので、「修復的司法」とも呼ばれています。自分が抱えている問題を自分自身で解決できるという自信は、自分自身の「経験」からしか生まれないのです。

 

(解説/小宮信夫 取材・文/井上真花 写真/鈴木愛子)