統計データを使って、子育てや教育にまつわる「DUALな疑問」に答える本連載。3歳にもなると反抗的になった子どもについイライラしてしまう…というDUALママ&パパは多いのではないでしょうか? 今回は子育て中の親が直面する育児危機についてです。子どもの成長に伴い、どんな危機が訪れるのでしょうか?

 こんにちは。教育社会学者の舞田敏彦です。予告と異なり恐縮ですが、今回は、育児危機のお話です。皆さんは育児のただ中にあるかと思いますが、「育児は楽しい」「自分自身も成長できる」といった実感をお持ちのことでしょう。

 しかし、苦しいことも伴います。子どもの発達段階に応じて、どういう危機(困難)が待ち受けているでしょうか。

 まあ、お子さんが大きい親御さんなら経験上お分かりでしょうし、育児をなし終えた先達に聞けば分かることですが、個人の体験には「ブレ」があります。それを排した統計にて、事態を可視化してみるのもよいでしょう。統計から分かる育児危機のメニューをご覧いただき、これから先、想定される危機に備えていただければと思います。

3~5歳・第1次反抗期の親の5割が子どもをたたきたい衝動

 依拠する資料は、東京都福祉保健局の『東京の子供と家庭』(2012年度)です。20歳未満の子がいる都内の父母(約8200人)に対し、育児に関して感じることを尋ねています。複数の項目を提示し、それぞれの頻度を答えてもらう形式です。

 例えば、「子供をたたきたくなることがある」について、「よくある」ないしは「ときどきある」の回答割合を見ると、末子が0歳(乳児)の父母では23.7%ですが、3~5歳になると53.6%に跳ね上がります。第1次反抗期が到来するためでしょう。

 めぼしい危機項目の肯定率が、子どもの発達段階に応じてどう変わるか。図1は、5項目の年齢曲線です。

 「イライラする」と「たたきたくなる」の肯定率は生後から上昇し、3~5歳でピークになります(●印はピーク)。子どもの自我が芽生え、第1次反抗期を迎える時期と一致しています。それまで従順だったわが子がいきなり抵抗し出すことによる、戸惑いの表れと思われます。この段階では、父母の9割がイライラを感じ、半分が子どもをたたきたい衝動にかられるようです。

就学後は「いじめに遭いはしないか」という不安増大

 学校に上がると、いじめ被害の不安がピークになります(63.7%)。教室という四角い空間(檻)での集団生活が始まるわけですが、「クラス内のどういうカースト(地位)に位置付けられるか」「いじめに遭いはしないか」という、親御さんの不安が大きくなるのはうなずけます。

 子どもが中学生になると、教育全般への不安が頭をもたげ、高校生になると、育児に傾倒している自分へのあわれみが生じてくるということでしょう。