子どもが青年期になると虚無感にさいなまれる!?

 以上は主な5項目の傾向ですが、育児危機に関わる項目は全部で14あります。14本の年齢カーブを描くと非常に煩雑になりますので、各項目のピーク年齢を整理した表を見ていただきましょう。発達段階ごとの特徴が分かるかと思います。

 3~5歳の幼児期にピークがあるのは、イライラ、孤独志向、たたきたい、世話に嫌気の4つです。それまで言うことを聞いていた子どもが抵抗し出す、生活習慣をなかなか身に付けられない……。こうしたことに伴う、焦りやいら立ちを共通の根としているように思います。

 そのレベルは恐らく、育児の孤立化の程度と関連しているでしょう。保育ならぬ「孤育」を強いられている親御さんほど、危ないのではないかと。

 第4回の記事では、都道府県別の共働き世帯率と虐待相談件数の間に、有意なマイナスの相関関係があることをお伝えしました。共働きが多い県ほど虐待の相談件数が少ない、逆に言えば、片方の親(多くが母親)が一人家に籠って育児をしている県ほどハイリスク、という傾向です。この点について、詳述する必要はありますまい。

 6~8歳の児童期(初期)では、いじめや発育の心配がピークです。学校に上がり、本格的な集団生活が始まる時期ですしね。学力テストや健康診断などの客観データも得られ、よその子との比較にもさらされるようになりますので、発育に関わる心配も出てくるのでしょう。

 他の子との比較(相対評価)だけではなく、どのレベルにまで達したか(絶対評価)、以前と比べてどれほど伸びたか(個人内評価)の視点も持ち、わが子の成長をおおらかに見守りたいものです。

 9~11歳にピークがある項目はありませんが、12~15歳の思春期になると、教育や将来への心配が出てきます。中学校卒業の15歳は進路の分岐点ですが、これを迎えるに当たっての不安の表れとみられます。

 そして16~17歳の青年期(初期)に達すると、残りの6項目が一気にピークになります。その内容を見ると、「子育てに我慢を強いられている」「育児・家事に追われる自分がかわいそう」「子育てに周囲の理解がない」「子どもがかわいくない」、果ては「子どもなんていないほうがよかった」など、虚無感を漂わせるものがほとんどです。

 これまで懸命に育児に励んできたのに、子どもは次第に素っ気なくなってくる。親離れしていく子に対し、なかなか子離れできない親の苦悩……。さらに、育児に伴って失ったもの(キャリア断絶など)を自覚する機会も多くなるでしょう。

 子どもが大きくなってから、こうした虚無感にさいなまれることがないよう、家事や育児にいそしむ「家庭人」とは異なる、「職業人」や「地域人」としての顔も持っておきたいものです。