「作った」と言ってもらうのが一番うれしい

―― 旦那さんも料理をするのですか。

お義父さんとは言いたいことを言える仲のまさみさん
お義父さんとは言いたいことを言える仲のまさみさん

まさみ  昔は全然しなかったんですけど、最近するようになって。料理経験もないのですが、飲み屋で食べたアヒージョを作るとか言って先日も作っていました。見よう見まねで、器用なんですよね。お義父さんによく似ています。私は料理の基礎がなかったとき、テレビを見てすぐに作ったりなんて、できませんでしたから。

 でも、一つ一つ片付けていかないと前に進めないたちで、洗い物が少しでもたまると気になるみたいなんです。

まさる そこは、オレと同じ。

まさみ だから、すごく時間かけてやっているよね。そんなの焼いている間に手が空くから、そのときにやればいいじゃないって思うんですけど。

―― そう思っても、口出しはしない?

まさみ したいんですけど、言うとやる気をそぐし、してもらったほうがいいじゃないですか。お義父さんも、遠くからじっと見ていて、何も言わないよね。

まさる 言わない、言わない。自分だって、言われるとムカッとくるからね。

まさみ  夫に料理を教えたりはしませんが、実は7年ほどお休みしていた料理教室を今年の10月から再開することにしたんです。自宅を使っての料理教室だったのですが、テレビや本、雑誌のお仕事がだんだん増えていって、忙しくなったので、いったんお休みしていたんです。

―― 最近になってまた料理教室を開きたいと思うようになったのはなぜなのですか?

まさみ 作って直接、人の意見を聞けるのがいいなと思うんです。テレビに出ていても、「おいしそうだったね」と言ってもらうことはありますが、教室だと直接会って、一緒に食べて、反応が感じられる、という良さがあります。

 また、仕事だとどうしても企画に沿ったものを作る必要がある。それは私にとってとても勉強になるし面白いことなのですが、それとは別に、個人的に興味があるものを作り、その作り方を伝える場があるといいなと思ったんです。

 私にとって、この仕事をしていて一番うれしいのは、「作ったよ」と言ってもらうことなんです。テレビに出て「おいしそうだったね」と言われるのももちろんうれしいのですが、それよりも、実際に作ってもらえるとすごくうれしいんです。作った人はもちろんのこと、作った人の家族だったり、恋人だったり、友達だったり、みんながそれを食べている、と思うと、幸せな気持ちになります。

小林まさみ
結婚後、料理研究家を目指し、会社勤めをしながら調理師学校で学ぶ。在学中より、料理研究家のアシスタント、テレビのフードコーディネーターのアシスタントを務め、独立。作りやすいレシピが好評で、雑誌やテレビなどで活躍中。著書に『おかずだね』(主婦と生活社)、『小林まさみとまさるのさわやかシニアごはん』(文化出版局)など多数。自宅での料理教室についてのお知らせは、ホームページまで。

小林まさる
昭和8年生まれ。小林まさみの義父。定年後70歳から、小林まさみの調理アシスタントを務める。現在はシニア料理家としても活動。著書に『小林まさるのカンタン!ごはん』(KADOKAWA/中経出版)、『まさるのつまみ—簡単!お待たせしません!』(主婦の友社)。

(文/山田美紀 撮影/吉澤咲子)