「顕微授精」に関する正しい情報公開を

 「精子の状態が悪いから顕微授精しかありません」という現状の説明は誤りであり、「精子が質的に良好であるから顕微授精が可能となります」という説明が正しいのです。精子を高度に選別した後、品質評価により得られた精子が質的に良好(精子機能が正常)、すなわち穿刺注入できるレベルであることを確認することが実施の前提となります。

 「顕微授精」はARTにおける授精法の約7割以上を占めておりますが、私の専門の立場からすると、これらの前提が普及していない現状では、「顕微授精」の実施はより慎重であるべきであると考えております。

 すべての医療行為において、リスクはゼロではありません。不妊治療を受ける方々にも幅広い正確な知識を持っていただき、現在の「顕微授精さえすれば子どもが授かる」という風潮を変え、皆さんがよりご自分達に合った不妊治療に出合えることを願ってやみません。

(ライター/阿部祐子)