少子高齢化に直面している日本で、子どもの貧困が深刻な問題になっています。問題解決のために、どのような支援や政策が必要となるのでしょう。前回の記事「日本で6人に1人の子ども貧困状態にある」に続いて、この問題にアカデミックな立場から取り組む首都大学東京・阿部彩教授と、子どもの貧困撲滅のための活動を続けるNPO法人フローレンス代表理事・駒崎弘樹さんによる対談の模様をお届けします。

義務教育なのに「給食だけ有料」はおかしい

駒崎弘樹さん(以下、敬称略) 前回の記事で、すぐにできる子どもの貧困の対策としてサービス給付があると伺いましたが、例えば、どんな内容の給付をするイメージでしょうか?

阿部彩さん(以下、敬称略) 少なくとも小中高の公立校は全部無料の給食にするとか、長期休暇中の学童保育の給食導入を徹底するとか

駒崎 なるほど。今はほとんど自治体任せで、地域によってばらつきがありますよね。

阿部 自治体がまったくお金を出さずに、保護者負担で学童を運営しているところもありますよね。ひどい話です。このあたりの問題解決なら、今の政権で可能な気がします。

駒崎 実は今日、「子どもの貧困八策」というものをお持ちしました。これをブラッシュアップして政治家の皆さんにぶつけていこうと思っていますので、先生からもご意見いただけないでしょうか。この中に、「学校の完全給食化」という項目も入れています。確かに義務教育なのに、なんで給食だけタダじゃないの…?と素朴に思いますね。

【子どもの貧困八策(案)】

1. 子どもベーシックインカム(多子に配慮) ※子どもがいる世帯に一定程度の所得保障
2. 児童扶養手当の改革(毎月払い・20歳まで)
3. 同一労働同一賃金 or 最低賃金引き上げ
4. 妊娠退学を止めさせる/若年ママの学び直し
5. 生活保護世帯も大学に行けるように(生活保護法の改正)
6. 給付型奨学金(所得連動型奨学金)
7. 完全給食の実施
8. 教育のナショナルミニマム化の達成(就学援助18歳まで・教材/制服フリー)

阿部 給食を無償化するだけで、就学援助費の支出が減りますよ。「妊娠退学を止めさせる」、これももっともですね。お金をかけずにすぐにできる対策です。「児童扶養手当の毎月払い」、これも実現することで助かる家庭はたくさんあります。制度とシステムを変えればいいだけですので、できるはずです。

駒崎 そうですよね。僕はマイナンバー委員会に参加しているので、先生のおっしゃる「少ない労力で実現可能な、マイナンバー制度を活用した給付付き税額控除」の仕組みづくりのため、引き続きガンガン言っていきます。

首都大学東京・阿部彩教授(左)と駒崎弘樹さん(右)
首都大学東京・阿部彩教授(左)と駒崎弘樹さん(右)