五輪メダリストにインタビューして学んだこと
日経DUAL編集部 Twitterで発信されている「子育ての知恵」が話題です。こういったツイートを始めたきっかけは。
隂山英男さん(以下、敬称略) 自身の子育てを振り返って、子育てにおいて大事なことって何だったんだろうと考えたとき、「お母さんの笑顔だ」ということに気づいたんです。そのことを世の親御さんたちに伝えたいなと思いました。
私自身は父親として最悪でした。仕事の都合で、家族をさんざん振り回してきたんです。新しい家を建てて家族一緒に住もうねと言っていた矢先に、広島への赴任を決めてしまって、長女と次女は地元に残り、しばらくばらばらに暮らすことになりました。その数年後には、京都に移ることになって。今度は、大学受験を控えた次女が妻とともに1年間広島に残って暮らすことになりました。こんな調子で、父親は家族に苦渋をなめさせてきたわけです。にもかかわらず、家族が崩壊することなく、子どもたちはたくましく育ってくれた。それは妻が、とにかくよく笑い、笑わせる人だったからだと思います。
DUAL編集部 「お母さんの笑顔が大事」というのは、先生ご自身の体験がもとになっているんですね。
隂山 ロンドン五輪のメダリストにインタビューをしたときにも、同じ発見がありました。吉田沙保里さん、福原愛さんといった輝かしい成績を持つ選手たちのお母さんは、どんな風に子どもと接してきただろうと思い、聞いてみたんです。すると決まって「笑顔」という答えが返ってきた。選手たちのお母さんは、成績に一喜一憂するのではなく、笑顔を絶やさないようにして、「子どもの気持ちをいかに楽にするか」ということを心がけていたのです。そして選手自身も、みなとても明るく、笑顔に屈託がない。それで私は、「ああ、人間の力を発揮させる根源は笑顔なんだ」と確信しました。