―― 評価制度はどうされていますか? 多工程多台持ちだと皆が同じことをできることになり、皆同じ能力を持っているということですよね。その辺りをもうちょっと詳しく教えていただけますか?
中畠 例えば10の工程のうち10できる人と、3できる人では評価は違います。さらに評価には熟練度も加わります。機械化できる部分もありますが職人技の部分もあります。例えば、染み抜きは機械では難しく、技術も必要です。入門編は「この部署から始める」といったスキルアップのプランがあり、現場のリーダーが「この社員は次のステージに進める」というタイミングを見極めています。
―― マネジネント層の男女比率はいかがでしょうか?
中畠 役員6名のうち、3名が女性です。そのうちの2人は非正規雇用から上がっていった取締役です。1人はシングルマザーで、子育ては卒業したようです。
―― 素晴らしいですね。御社の場合は非正規だったとしても希望があれば正社員になれるということですね。普通の会社ではそこがなかなかうまくいかず、一度非正規に落ちたら二度と上がらせてもらえない。経営者はどうしても同じ能力なら安い給料で買いたたいたほうがいいと考えがちです。だから、産休・育休から戻った女性が元のポストに戻れなかったりする場合も少なくないんです。中畠さんの垣根の無さは、どういう考え方が背景にあるのでしょうか?
産休・育休で社員の能力が落ちるわけがない
中畠 本人の都合で働いていただいた結果が、会社の都合にも合うということが一番いいじゃないですか。本人の都合を会社に合わせて無理に曲げてもらっていたら、会社がいびつになるでしょう。産休・育休などで多少のブランクが生じたとしても、能力はそう落ちるものではありません。自転車に乗れる人が後で乗れなくなることはまずない。それと同じで、ブランクで評価が落ちるのはおかしいというのが基本の考え方ですね。
―― 一般的には能力が落ちると思われているようですがそんなことはない、と。
中畠 ないです。
―― 時代を捉えた感覚をお持ちだなと思うのですが、これからどんなふうに時代が変わって会社の在り方が変わっていくのか。業界や自分の会社がどう変わっていくのか。これからの変化についてお聞かせいただけますか?
中畠 一つには、少子高齢化は止まらないので、人材がフレキシブルに交流していくでしょう。それに対応できるグローバルな人材を育成したり採用したりする必要が出てくると思います。外国の方の幹部というのも視野に入れています。ちなみに、役員3名のうちの3名が女性。2名が非正規雇用からで、1名がシングルマザーで、もう1名は中国人です。中国人のメンバーは取締役であり、工場長です。
―― 今、日本全体が女性活躍を推進して労働人口を補おうとしていますが、その先には外国人を雇う必要が出てくる、と。
中畠 実際、既に外国の方を雇っている会社も多いでしょうし、その可能性は極めて高いでしょうね。
―― そのためにも、御社は動いているということですね。お話を伺う前から「新しい事業のやり方もされているし、非常に新しい考え方をされている」という印象がありました。これは意識的に取り組まれた結果なのかなと思っていたのですが、お話をお伺いすると、昔から当たり前にあった、子どもが身近にいる風景や、労働者の安定と経営の安定がつながっているといった、いわば常識的なことを大切にし、実現されてきた結果なのだなと感じました。
中畠 そう。だから、私がやっていることは、別に新しくもなんともないんです。
―― そう言い切れる、「当たり前のことだ」と言える姿が本当に素晴らしいと思います。
(ライター/水野宏信、撮影/村上 岳)