病気をきっかけに、仕事に対する考え方も変わった

 そう、人前で歌うことが全く苦ではなくなったんです。それまで皆で行くことなんてなかったカラオケも、復職後は積極的に行き、モノマネまで披露するようになりました。アフロのかつらをかぶって、平井さんのヒット曲「POP STAR」を歌ったり。しかも替え歌で(笑)。いかに今の会社の上の人が僕らを苦しませているかという歌詞が、宴会では大ウケでした。

 「木山さん、歌うんですね。歌、上手ですね」なんて言われると、ちょっとこそばゆかったですが、やっぱりうれしかったですね。歌で表現することで、人と人がつながるきっかけになるんだという発見もありました。

 同時に、仕事に対する考え方も変わりました。

 それまでは慣れない管理職の仕事に悩み、スタッフの面談でも毎回細かく気を使っていました。もともとあまりストレートにモノを言えるタイプではないので、相手が傷つかないように言葉を選んで、言いにくいことは遠回しに伝えすぎて、結局全然伝わっていなかった、みたいなこともよくありました(笑)。

 でも、「僕は明日死ぬかもしれない」と思うと細かいことが全く気にならなくなった。自分には人生の時間がないのかもしれないんだから、いちいち気を使っている場合じゃない。これはもう、お互いに正直に向き合ったほうがいいな、と思いまして。そこで、もう相手が傷つくなんて考えずに、面談でも率直に話すようにしたんです。すると、意外にもスタッフからの反応が良かった。率直に話し合うことで思ってもいなかった良い結論につながることもあり、仕事がスムーズに進むようになりました。

 「木山さんが(手術で)いない間、皆すごい頑張っていたよ。迷惑かけないようにって」

 隣の課の課長からそんな話を聞いたときは「管理職として、自分一人が何かしてあげないといけないんだという考え自体が偉そうだったな」と反省しました。

 仕事がうまくいかなかったり、思うように進まなかったりしたのも、自分だけでなんとかしないといけないと思いすぎて、周りに「今、ちょっと無理だから手伝ってくれないか」と言えなかった。結果、仕事を抱え込んで、何もできなかった。そういうことだったんだなと。仕事は自分一人でやっているわけじゃない。皆で本音で会話して、皆で乗り越えて行くことが大事なんだって、やっと分かったんです。

 それからは完全にふっきれました。スタッフを信用して、任せられるところは任せよう。自分ができないことはできないと認めよう、と。相手を成長させるのではなく、相手に働きかけることで、会社務めでも、僕自身が成長できるのかもしれないと。それって子育ても同じなのかもしれないなと、今は思うんです。

* 次回は、成長する4人の息子達への思いを伺います。

(ライター/松田亜子、撮影/鈴木愛子)