28歳でリクルートに就職。深夜残業も当たり前の会社人間に

 ちょうど、インターネットがいよいよ勢いづいてきたという頃。IT業界なら今から勉強すれば追いつけるかもしれないと考えて、Macのパソコンを買い、イラストレーターをしていた姉にPhotoshopの使い方を学びました。独学ながらHTMLも習得して、ウェブページも書けるように。そうしてようやく、製作スタッフとして採用してくれたのがリクルートでした。

 最初は大変でしたよ。なんせ、28歳まで名刺交換すらしたことのない人間ですから。「いつもお世話になっています」というお決まりの挨拶も言えなかったんです。「初対面なんだから、まだお世話になっていないし」なんて思って。それくらい、バカ正直で社会常識のない人間でした。

 そんな僕でしたが、就職して気づけば超会社人間に。担当していたウェブ広告の仕事はとても忙しく、あんなに「会社人間にはなりたくない」と思っていたのに、深夜残業も当たり前の日々を送るようになりました。

 そして、管理職に。内向的な性格の僕に務まるはずがないと、最初はお断りしたのですが、実はその1カ月前に家を買い、ローンを組んでいました。子どもも3人抱えて一家の大黒柱としては、「今頑張るしかないでしょ」と引き受けることにしました。

 とはいえ、いきなり100人のスタッフがいる部署の課長です。しかも、部署の全スタッフを2カ月に1回は面談しなくてはならなくて。僕は自分の仕事で精一杯で、人のことをあれこれ言えるほどできた人間じゃない。しかも自分の仕事も終わらない……。次第に鬱々としていきました。

 そんなとき、甲状腺がんにかかっていることが分かったんです。