21歳で単身ニューヨークへ。路上販売からスタート

―― 1999年、21歳で単身ニューヨークへ。“まずはアートの街へ”といっても、頼るツテもなく、初めての街への不安はなかったのでしょうか。

河井:当時は「最先端のアートの街で、作品を通じてコミュニケーションしたい」という思いだけが頭にあって、失敗したときのことは全く考えなかったんですよね。渡米はそれまでの旅の延長線上にあって、今思えば、若さゆえです(笑)。もちろん渡航資金が必要ですから、カリフォルニアからの帰国後、アミューズメントパークなどでアルバイトをしながら、渡航・滞在資金をためました。

 初めての滞在は3週間。知り合いもいないので、ユースホステルに泊まりました。ニューヨークの路上では、至る所でスケッチブックに描いた絵画などを売っていたりするのですが、街を巡っている中で、私と同じようなアーティストの卵が集まり路上販売をしている場所があったので、私も紛れ込んでみたんです。

―― それは、とてもいい目のつけどころですね! 世界中から才能が集まるニューヨークでの路上販売はどうでしたか。

河井:とにかく新しい出発にワクワクしていました。ホームレスのおじさんなど、いろいろな人が声を掛けてくれました。声を掛けてくれる人がいたり、同じようにアート活動を行う若手作家との交流もできたり、自分が描いた作品を通じて一期一会のコミュニケーションができることが私にとってエキサイティングな体験の連続で、大きな喜びでしたね。

河井さんのアトリエにて。ホワイトキャンバスにカラフルな色使いで、河井さん自身も作品の一部のよう!(C)Justin Waldron
河井さんのアトリエにて。ホワイトキャンバスにカラフルな色使いで、河井さん自身も作品の一部のよう!(C)Justin Waldron

―― 滞在中には、思わぬビッグネームとの出会いもあったとか。

河井:ある日いつものように路上で絵を売っていたら、「あなた、面白いことしているわね」と一人の女性が100ドル分も作品をまとめて買い上げてくれたんです。まさかの大金にびっくり! 感謝の気持ちを伝えつつ、その人の名を「キキ」と聞いて「キキという名前は、かわいいネコちゃんみたいですね」と伝えたんです。

 後から知ったのですが、彼女は著名な彫刻家、キキ・スミスさん。「あなたはドローイング(絵)を描きますか?」と聞いたところ、「いいえ、私は立体作品を作っているのよ」とキキさん。現地のアーティストに詳しくなかった私は、彼女に「でも、絵も楽しいよ。ぜひトライしてみて」とおすすめしたのを今も覚えています。「いつでも電話して」とキキさんから連絡先をもらい別れた後、「あの人誰だか知らないの?」と、その様子を見ていたアーティスト仲間達にびっくりされました。

―― まるで映画のようなシンデレラストーリーですね!

河井:その後、キキさんに連絡してみたんですが、当時、対面コミュニケーションはできても、電話を通じて音声だけで意思の疎通をするだけの語学力がなかったんです。それで最初のコンタクトでは用件をうまく伝えることができなくて、私だと分かってもらえず自分から切ってしまった。後日、日本語も英語も話せる友人を通じて再度連絡しました。