経済的な負担がかからず、私立中高一貫校と同等に、学習カリキュラムが充実している公立中高一貫校。なかでも、東京都立の中高一貫校は、「未来を切り開くリーダーの育成」を共通の教育目標に、各校が独自のカリキュラムを展開しており、人気を集めています。しかし、目指すものは同じでも、その中身には違いがあり、理数教育に力を入れている学校、英語教育や国際交流に積極的な学校、日本の伝統文化を学ぶ授業を設定している学校など、それぞれに特徴があります
 では、実際、どんな授業が行われているのでしょうか? 特に人気の高い「都立小石川中等教育学校」と「都立白鷗高等学校・附属中学校」の2校を訪ねてみました。

【公立中高一貫校の今 特集】
(1) 公立中高一貫校 人気上昇の背景と受検倍率公開!
(2) 公立中高一貫校 4年後の大学入試改革では有利に?
(3) 公立中高一貫17校を徹底分析 学校選びの着眼点
(4) 小石川と白鷗 公立中高一貫人気2校リアルリポート ←今回はココ
[5] 総合力求める公立中高一貫校「適性検査」傾向と対策

都立小石川中等教育学校

国内外の科学コンテストに積極的にチャレンジ!

 今年3月、教育界で大きな話題になった、都立中高一貫校初の東大2ケタ合格。2006年に都立中等教育学校として設立された都立小石川中等教育学校(以下、小石川)が、設立10年を迎えた今年、14名の東大合格者を出したのです。第一期生から4名→5名→6名→9名と毎年、東大への合格者数を増やしている小石川。公立中高一貫校への期待がさらに高まります。

 訪れた3月、正門から校舎を見上げると、何やらたくさんの垂れ幕があります。「国際物理オリンピック銅メダル」「科学の甲子園全国大会出場」「日本数学オリンピック本選出場」などなど、全国・世界の理数コンテストの実績がズラリ。都立中高一貫校の中でも、理数に強い学校として知られていますが、その実績の数の多さに驚かされます

 東京大学では、2016年度から推薦入試を導入しました。推薦入試合格者77名の中の一人に、小石川の男子生徒がいました。その生徒は高校1年生のときに「物理チャレンジ」という日本の物理オリンピックに挑戦。このときは賞が取れなかったけれど、東京都教育委員会による「次世代リーダー育成道場」の一貫として、1年間アメリカ留学をし、帰国後に2年生で再チャレンジしました。3年生のときには日本代表の5人に選ばれ、インドのムンバイで開かれた国際オリンピックに出場し、銅メダルを獲得しました。

 まさに、次世代の未来を切り開くリーダーとして活躍してくれそうですね。特別、優秀な生徒だったのでしょうか?

 「確かに優秀な生徒でしたが、彼が特別というわけではありません。小石川では、1年生から総合的な学習の時間で探究活動を行い、生徒一人ひとりの探求心や課題解決力を伸ばしています。その積み重ねが、今回のような結果に結びついたのではないでしょうか」

 そう話すのは、奈良本俊夫校長です。では、同校の6年間の学習カリキュラムとは、どんな内容になっているのでしょうか?

<次ページからの内容>
・5年生(高2)まで全員が文理を分けず、全科目を履修する
・生徒の探求心や課題解決力を伸ばす、小石川フィロソフィーとは?
・国際社会で活躍するリーダーを目指すなら、日本の文化を知ることから
・受け継がれる合言葉は、辞書は友達、予習は命