「自分よりもっとつらい思いをしている人がいる」

 ところが、そうした過酷な状況にもかかわらず、なかなかSOSを声高に訴える人がいないというのは、今回友人や知人と話していて感じたことだ。

 こちらから少し突っ込んで聞けば、「自分の住んでいた前の家が火事になった」「救助活動をしていて足の裏をガラスで切ってしまい、思うように歩けない」「人を助けていたときに、肋骨を折ってしまった」という話が、どんどん出てくるのに。

 特に地震直後は道路事情や人員の問題で物資を避難所へ支給できなかったり、物資がある所とない所の差があったりするなど、全体的にはあまり必要な物資が行き渡っていなかったのだ。

 にもかかわらずSOSを出さなかったのは、「自分達よりもっとつらい思いをしている人がいる」「みんな大変なのに、悪くて頼めない」といった田舎の人の良さが裏目に出てしまっていたからのように感じた。特に取引先の会社は、もともと九州産などにこだわった食品会社だけに、自分達より地域や周りの人達への支援を優先させようと思っていたのだろう。

 もっと早く言ってくれれば…と思いながら、念のためオランダから持ってきていた物資を渡すことができた。

 益城町にある本社や工場では建物が壊滅的な被害を被っており、ストックしてあった物資は当然使えない。さらに水が出ない、ガスが出ないといったことがあり、工場では掃除もできず、ひどい悪臭に悩まされ、トイレも使えない状態が続いているそうだ(4月25日現在も)。

 余震がいつまで続くか分からない状況で、半壊したり傾いたりした家は今後どうなるのか? いつ崩れるか分からないマンションでは、住人が、安全のためにオーナーから早急に立ち退いてほしいと言われ、車も持っていない人は途方に暮れている状態だ。 

プライバシーがまったくない避難所での生活が続いている
プライバシーがまったくない避難所での生活が続いている