今、子育ては、とても複雑になっています。「勉強はできてほしいし、スポーツや音楽もできてほしい、優しい子であってほしいし、活発な子でもあってほしい」。親が子どもに求めるものが多過ぎて、それがうまくいかないと親も子どももつらく感じてしまう……。でも、子育てのゴールは突き詰めれば、子どもを自立させること。子どもが一人で生きていくために必要な力をつけてあげることです。そう考えてみると、親が子どもにしてあげられることはそう多くはありません。

3回にわたってお伝えしてきた『田舎のキャバクラ店長が息子を東大に入れた。』の著者・碇策行さんの子育て観。その中に、子育てに大切なヒントがきっと見つかるはずです。

【『田舎のキャバクラ店長が息子を東大に入れた。』著者・碇策行さん】
第1回 「息子を東大に入れた田舎のキャバクラ店長」の育児論
第2回 私が息子の学校のトイレ掃除を買って出た理由
第3回 「なんでもいい」と答えてしまう子の意外な共通点 ←今回はココ

人生は決断の連続。だから、子どもの自ら考える力を鍛えた

『田舎のキャバクラ店長が息子を東大に入れた。』著者・碇策行さん
『田舎のキャバクラ店長が息子を東大に入れた。』著者・碇策行さん

 人は誰でも親になったとき、うれしく思うのと同時に、「ちゃんと育てられるだろうか」という不安に駆られるのではないでしょうか? 子どものころ、親に捨てられた私は、うれしいよりも不安のほうが大きかった。いつか自分も両親と同じように、この子を見捨ててしまうのではないかという思いがあったからです。

 だから、私はもし自分がいなくなっても、この子が一人で生きていけるように育てようと決めました。それが、この子に対する「裏切らない子育て」だと思ったからです。

 しかし、高卒で学歴がなく、水商売で社会的な信用もない私に、息子にしてあげられることは、さほど多くはありません。でも、自分が子どものころ、親にされて嫌だったこと、親がしてくれなくて満たされなかったことはしたくないと思いました。そう考えたとき、私が教えられることは、とてもシンプルだということに気づいたのです。それは「子どもに安心感を与える」「子どもに伝えたいことは親自身が手本になる」「子どもに選択をさせる」というものでした。

 自分自身の人生を振り返ってみてもそうですが、人生では常に「決断」の連続です。私達はその時々の状況や条件に応じて、決断をしていかなければなりません。決断というと、ちょっと大げさに感じるかもしれません。「選択」と言い換えてもいいかもしれませんね。人生のほとんどが、いくつかの選択肢の中からどれかを選ぶことの繰り返しです。その選択がうまくいくこともあれば、失敗することもある。私の人生は失敗の連続でした。でも、自分自身で選択して失敗したことは、反省をすることはあっても後悔はしませんでした。

 だから私は、息子が小さいときから常に息子自身に考えさせ、決めさせました。それが彼の人生だからです。

 私には、自分の人生経験から「生きていくことは失敗の連続。うまくいくことのほうが少ない」という確信があります。だから、息子が失敗することを気にしませんでした。息子がやりたがることは何でもやらせ、できたことは共に喜び、できないことは見守り、迷っているときは「まずはやってごらん」と声を掛けました。

 考えがまとまらない幼いころは、「こっちとそっち、どっちがいいと思う?」と声かけをして選択をさせ、10歳を過ぎたころからは、「あなたはどう思う?」と問いかけ、息子に考えさせました。息子が考えるのに時間がかかり、途中でつい妻が自分の考えを言うと、妻を怒ることもありました。子どもは大人と違って経験が少ない。だから、自分の考えをまとめるまでに時間がかかっても仕方がないのです。

 なぜ私がそこまでこだわったのかといえば、この子が一人になっても生きていけるようにするためです。