両親共に高卒、父親はキャバクラの店長、母親も水商売をしている。年収は300万円、学歴もお金もない。そして、自分には「わが子を捨てた」親の血が流れている……。見本となるものが何一つなく、不安から始まった子育て。自分がこの子にしてあげられることは何だろう?と碇さんは考えました。そして、見つけた答えが、「わが子を裏切らない」こと。

勉強は教えられない。でも、伝えたいことはある。だけど、自分ができないことを「やれ」とは言わない。だから、碇さんは「子どもに伝えたいことは、自分自身が手本になる」という子育てを実践しました。

【『田舎のキャバクラ店長が息子を東大に入れた。』著者・碇策行さん】
第1回 「息子を東大に入れた田舎のキャバクラ店長」の育児論
第2回 私が息子の学校のトイレ掃除を買って出た理由 ←今回はココ
第3回 「なんでもいい」と答えてしまう子の意外な共通点

息子の前で何度も言ったのは「ありがとう」の言葉

『田舎のキャバクラ店長が息子を東大に入れた。』著者・碇策行さん
『田舎のキャバクラ店長が息子を東大に入れた。』著者・碇策行さん

 子どものころ、両親に捨てられた私は、親として見本にしたいと思えるものがありませんでした。そんな私が親になったとき、「親として、何を伝えたらいいのか」考えました。それと同時に、「自分も両親と同じように、この子を見捨ててしまうのではないか」という不安が襲いかかってきました。

 だから、私は「もし私がいなくなってしまっても、この子が生きていけるように育てよう」と心に決めたのです。

 私は、もし自分がいなくなっても、周りに「手を差し伸べてくれる人」がいれば、息子は生きていけるに違いないと思いました。私自身が、アルバイト先の先輩や友人の親に支えられて生きてきたという実感があるからです。

 店の女の子達と接している中で、私が常日ごろから最も重要と感じているのが「あいさつ」です。あいさつがきちんとできれば、他人に嫌われることは少ないのです。中でも、「ありがとう」を言える人になってほしいと思いました。店の女の子達は、「おはようございます」や「お疲れさまでした」は言えるのに、なぜか「ありがとう」と言える子が少ない。でも、「ありがとう」には人を笑顔にさせ、味方につける不思議な力があります。

 だから、私は息子の前で「ありがとう」をたくさん言いました。買い物で商品を袋に入れてもらったら「ありがとう」、おつりをもらっても「ありがとう」。息子との間でも「ありがとう」を欠かさず口にしました。

 そう、「勉強」よりも「ありがとう」です。

 そして、もう一つ教えたことがあります。