モンスターペアレントと言われるかもしれません。そんな私を初めは警戒する先生もいましたが、何度も通い、自分から話しかけることによって、少しずつ先生との距離を縮めていくことができました。そんな私を真っ向から受け止めてくれたのが、入学式で「東大に合格させるだけの学力をつける」と宣言したあの学年主任だったのです。

 当時、この学校に対する不満は色々ありました。「掃除が行き届いていない」「トイレが汚い」「あいさつができない」「先生と保護者の間に信頼関係が築けていない」……。

息子を思い、学校を思い、自発的にトイレ掃除を買って出た

 でもそれを批判したところで、何も変わらないと思いました。だから、まずは自分が学校に協力する姿勢を見せなければならない、そう思ったのです。そして、私は息子の学校を訪れるたびにトイレ掃除をすると決意しました。何もかもを学校に頼るのではなく、自分が伝えたいことは自分で行動し、それを見て子ども達が変わってくれればいいと思ったのです。

 次第にその効果が表れ始めました。保護者と距離を置いていた先生も、学校に言いたいことが言えず黙り込んでいた保護者も、みんな少しずつ歩み寄り、それが子ども達の生活にも良いほうへ表れるようになりました。やがて息子達が受験を迎えるときには、先生と保護者が一体となって、子ども達をサポートする役割を果たしました。この変化はとても大きかったと思います。

 今あのころを振り返ると、なぜ私はそこまでして学校に通ったのだろうと思うことがあります。もしかすると私は自分ができなかった高校生活をもう一度やってみたかったのかもしれません。

* 『田舎のキャバクラ店長が息子を東大に入れた。』の著者・碇策行さんのインタビューは、全3回にわたってお伝えしていきます。次回は最終回です。

(取材・文/石渡真由美、撮影/小川 聡、キッチンミノル)