皆さんは、わが子の子育てで「どうしてうちの子だけ、こんなに手がかかるの?」と戸惑ったことはありませんか? あるいは、子どもの友達やクラスの子に「言葉や行動が乱暴でちょっと気になる子がいて…」という経験はないでしょうか。

 とにかく落ち着きがない、友達の輪に入れない、着替えなどが身に付かない、忘れ物ばかりする、トラブルが多く先生に怒られてばかり――そんな子ども達の「気になる」「困った」「どうして!?」という姿の背景には、実は「発達障害(発達の偏り)」による困難さがあるのかもしれません。

 日経DUALでは、そんな子どもの気になる発達の偏りについて、特集記事として取り上げます。子どもの発達が専門の病院の医師、心理学の教授、また発達障害のある子ども達を支援している企業などに取材をしました。最終回では、「大人の発達障害」についても紹介します。4回目の今日は、発達偏りのある子や、その親への支援について、最新の取り組みをご紹介します。

【子どもの気になる発達の課題 特集】
第1回 クラスに2人が発達障害?子ども達の現実
第2回 発達障害のある5歳児に、よく見られる特徴とは?
第3回 「もしかして、うちの子は発達障害?」と思ったら
第4回 広がり始めた!発達障害の子どもと、その親の支援 ←今回はココ
第5回 「生きにくさ」の裏に、大人の発達障害が隠れている

親が変わると、子どもも変わる!? 親向けの支援

 今回は、発達障害への支援の例を2つ、紹介したいと思います。まず1つ目は、発達障害の子どもを持つ親に対する支援です。

 子どもだけでなく親の支援も非常に重要と話すのは、名古屋学芸大学・教授の黒田美保さんです。

 「発達障害の支援で先を行くアメリカでは、子どもに対する療育プログラムの中に、必ず親向けのプログラムが含まれています。なぜ親の支援が大切なのかというと、親の子どもに対する関わり方によって、子どもの自己肯定感が大きく影響されるためです」と黒田さん。

 発達障害がある子どもは、集団行動が苦手で、保育所や学校などの集団ではどうしても周囲から浮いてしまいがちです。また呼ばれても返事をしないとか、太っている人に正直に「太ってるね」と言ってしまうなど、周りの人を戸惑わせる言動も少なくありません。偏食が激しい、聴覚や触覚などの感覚に過敏性がある、決まった手順にこだわりがあるなど、独特の感性を持っている子もいます。そのため親は、「育てにくい」「子育てが難しい」と感じてしまうことも多くあります。

 「そういう発達障害の子どもに対して、『忘れっぽくて手がかかるけれど、そこがかわいい』という感じで、子どもに肯定的に接することができる親の場合、子どもは自己肯定感も高く、素直で社会に適応しやすい青年に成長していくケースが多いと感じます。一方、最近は成人してから発達障害が判明するケースも多くなっていますが、小さいころから親に『ちゃんとしなさい』『どうしてできないの』と叱られ続けてきた人の中には、自己肯定感も、人や社会に対する信頼感も低く、改善が難しいなと感じられる人もいます。中には親子関係が既に破綻していて、親から生育歴を引き出すことができないケースもあります」

 <次ページからの内容>
 ・「うちの子、こんないいところがあったのね」と親が変わる
 ・子どもの「どこでも、誰とでもやっていける」力を支援
 ・例えば漢字が覚えられない場合、原因は子どもによって違う